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美しき異形達
第十話 風の令嬢その九

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「生憎ね」
「へえ、あんた女かよ」
「そうよ」
 生物学的にはそうだというのだ。
「この声でわかるわね」
「ああ、まあ男でも女でもな」
「私達のやることはあんた達を倒すこと」
「だよな、それじゃあな」
「死んでもらうわ」
 今ここで、だというのだ。
「いいわね」
「降りかかる火の粉はってな」
 こう言ってだ、そのうえでだった。
 薊はその手に七節混を出した、それを両手に持って構えてからあらためて怪人に対して言葉を告げたのだった。
「生きる為にな」
「そういうことになるわね」
「じゃあはじめるか」
「薊ちゃん、気をつけてね」
 薊の横にいる裕香が眉を曇らせてその薊に言ってきた。
「いつもは動物だったけれど」
「今度は植物だからな」
「勝手が違うかも知れないわ」
 だからだというのだ。
「そうしてね」
「わかってるさ、これでも気をつけてるよ」
 棒を構えたままでだ、薊は怪人の目を見据えつつ裕香に答えた。
「こいつに対してもさ」
「それじゃあ」
「やるか」
「ええ、いいわ」
 怪人も答えてきた、そしてだった。
 怪人から仕掛けてきた、その手に持っている鞭を放ってきた。鞭は右手から放たれたがそれは一本ではなかった。
 二本あった、その二本の鞭を薊に同時に向けてきた。その二本の鞭を。
 薊は上に跳んでかわした、そして着地してからこう言った。
「あんた、慣れてるね」
「鞭の動きにね」
「慣れてる奴は片手で二本の鞭を操れるってな」
「そうよ」
 その通りだとだ、怪人は鞭を戻して再び攻撃を仕掛けられる姿勢になってから薊に述べた。
「鞭は私の身体、慣れるも慣れないも」
「自分の身体を使うってことか」
「そういうことよ」
 だからだというのだ。
「これ位は何ともないわ」
「そういうことかよ」
「生憎だけれど強いわよ」
「自分で言うかね」
「自信はあるわ」
 鞭、つまり自分の身体を使うことについてというのだ。
「あんたが私に勝つことは難しいわよ」
「おいおい、じゃああたしはここで死ぬってことかよ」
「その通りよ。覚悟はいいわね」
「言っておくけれど覚悟はないさ」
 笑みを浮かべての言葉だった。
「そうした覚悟はさ」
「あがくのね」
「元々諦めが悪いんだよ」
 自分でこう言った薊だった。
「特に闘う場合はな」
「どうせ死ぬのに」
「いやいや、死なないんだよ」
 薊は足を動かしていた、日本の武道の様にすり足で左から右にだ。そうして螺旋を描く様にして怪人との間合いを詰めている。
 そうしつつだ、怪人に対して言うのだった。
「これがな」
「つまり私に勝つということね」
「そうさ」
 まさに、というのだ。
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