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乱世の確率事象改変
変わらぬ絆
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れなかった」

 何処か空っぽのような声で紡がれ、ゾワリと肌が泡立ったのは……やはり白蓮だった。

――なんだ……? 何かおかしい。桃香はなんでこんなに……抜け殻のようになっているんだ。

 疑問を浮かべるも答えなど出ず。白蓮に続いて朱里が、愛紗が、星が桃香の異常に気付いていく。ただ……鈴々だけは不思議そうに首を傾げていた。
 暫らく悩んだ後、桃香に気を取られ過ぎていた白蓮は桃香が口を開く前に、他の事に気付いて焦った顔を上げた。

「ちょ、ちょっと待ってくれ。その対価で成立したなら、なんで秋斗と雛里は此処に居ないんだ?」

 絶望に表情を落とす二人、愛紗と朱里を見て星はそっと眉を顰めた。
 心配で逸る心はもがいている。逢いたいと願う心は喚いている。一目見て、余りにも少ない言葉を交わしただけ。会ったなら酒を飲もう。笑い話をしよう。貶し合いをしよう。愚痴を聞いて貰おう。沢山、本当に沢山、話したい事が山ほどあったのだ。
 白蓮が如何に誇り高く、勇敢に戦ったかを彼女の前で語って、からかいながら一緒に褒めるつもりだった。
 牡丹が如何に気高く、愛しい主の為に散って行ったかを話し、三人で思い出話をして心の中に生きていると感じたかった。
 自分が如何に……不甲斐無かったのかを零し、呆れながらも励まされて、奮い立たせて欲しかった。
 されども彼女は渦巻く感情を欠片も出さず、桃香達三人に何があって何をしたのか、そしてどうして彼と会えないのかを見極めようと感情の全てを抑え込む。

「交渉の対価は秋斗さんと雛里ちゃんが帰ってきた事で変わったんだ。二人が天幕に着く前に曹操さんから……秋斗さんか雛里ちゃんが私達とは違う対価を示したなら、改めて交渉をするって提案されて、私はそれも呑んだ。きっと……二人は私と同じ答えを選んでくれるって……思ってたから」

 ぎゅっと胸の前で手を結ぶ。思い返す度に、桃香の胸は締め付けられていく。同じようにその時の事を思い出した朱里は堪らず、自身の身体を抱きしめた。

「曹操さんと話して、同盟が組まれなかった事を聞いた秋斗さんは……通行許可になった事を言い当てて、対価に支払われたのは誰かって聞いた。あの人は全部予測してたんだと思う。自分が対価に入る事も含めて」

 絶句。白蓮と星は言葉を失った。ただ、漸く口を開いた者が一人。

「お兄ちゃんと雛里が此処に居ない理由になってないのだ」

 俯けた顔からポツリと紡がれた。感情の読みやすい彼女の声から分かるのは……真っ直ぐな怒り。何故、と思う前に顔を上げて向けられた目尻には涙が一粒。
 一人、白蓮は立ち上がって鈴々を抱え上げ、その小さな身体を抱きしめて椅子に座った。

「鈴々……もう少しだけ話を聞こうな。まだ全部じゃないからさ。秋斗は頭がいいし、雛里と一
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