暁 〜小説投稿サイト〜
少年少女の戦極時代U
禁断の果実編
第75話 糸が切れていた間
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


 赤いオーバーロードが去ってから、沢芽市は物々しい空気に包まれた。

 外を歩く人はいない。街路のあちこちに量産型黒影とカーゴ車が配備され、インベスは見つかり次第、彼らによって処理された。

 それらの様子を物陰から、咲、そして戒斗とザックは窺っていた。

「そんなことがあったの――」

 道中で戒斗とザックは教えてくれた。咲が紘汰と没交流の間に、紘汰に何があったか。

 和解したはずの貴虎に襲われたこと(貴虎のアリバイを知る咲は偽物と予想している)。
 退院した光実と連絡がつかないこと。
 赤いオーバーロードとユグドラシル勢力によって、紘汰がひどい傷を負ったこと。

(あたしが紘汰くんからはなれなかったら、こんなことにはならなかった? ああ、でもそれだとヘキサをほっとくことになった。だめだよ。やっぱり、あたしが選ぶのはヘキサなんだ)

 結論は決まり切っている。なのに葛葉紘汰のそばにいなかった自分自身が、歯がゆくて。

(あたし、なんかおかしい)

 自身の心の変化が恐ろしい。咲は知らず我が身を抱いた。

「おい、戒斗、咲。あれっ」

 ザックの声に咲は我に帰り、ザックが指したほうを見上げた。

「何だあれは…」

 ユグドラシル・タワーの外壁に濃緑の蔦が絡みつき、外壁を覆っていく。濃緑の中に点在する赤紫はヘルヘイムの果実だ。ヘルヘイムの植物がユグドラシル・タワーを内側から侵食しているのだ。

 戒斗が一番に走り出した。咲とザックも戒斗を追う形で走り出した。どこへ行くかなど聞く必要はなかった。目指す場所など、ユグドラシル・タワー以外にない。

 駆けつけたタワー前にはマリカがいた。弓さえ持たず、無手のまま複数の上級インベスに袋叩きにされていた。

「ザック! 室井!」

 戒斗の声を受け、咲もザックもドライバーを装着し、ロックシードを開錠した。

「「「変身!!」」」

《 レモンエナジーアームズ  ファイト・パワー  ファイト・パワー  ファイ・ファイ・ファイ・ファイ  ファ・ファ・ファ・ファ・ファイト 》
《 クルミアームズ  Mister Nucle-man 》
《 ドラゴンフルーツアームズ  Bomb Voyage 》

 それぞれのアーマー装着が終わるや、バロンとナックルがマリカを襲うインベスたちを殴り、蹴り飛ばした。
 インベスの集中攻撃から解放されたマリカを、月花が支えた。

『はぁ…っ、はっ…』
『おねーさん、まさか赤いのと戦ってから、ずっと変身しっぱなし?』

 覚束ない足元。上がった呼吸。それらが月花の問いを肯定していた。

 戦いから気を逸らした月花とマリカにも、インベスは容赦しない。カミキリインベスが彼女たちに細長い凶手を
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ