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美しき異形達
第九話 風の力その十四

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 怪人は終わった、身体が灰になろうとしている中で言うのだった。
「見事だ、これでだ」
「終わりですね」
「俺は死ぬさ」
 自分でこう言うのだった。
「よくやってくれたよ」
「苦労しました」
「可愛い顔して派手に仕掛けてきたな」
「これが私のスタイルでして」
 戦いのだとだ、桜は微笑みをたたえたまま言うのだった。
「ですから」
「だからか」
「はい、今の様に戦わせてもらいました」
 まさにというのだ。
「この様に」
「そうか、まさかもう紋章を出すとはな」
「紋章?今の北斗七星の」
「そうだ、これは話してもいいな」
 怪人は何かを判断した様にしてこう言った。
「俺が知ってることもこれ位だしな」
「それはどういうことですか?」
「貴様等はそれぞれの力で俺達を倒したら紋章が出る」
「それぞれのですか」
「ああ、そうさ」
 そうなるというのだ。
「そうなるからな。まあ俺が知ってることはこれだけだ」
「左様ですか」
「それは教えておいてやる、俺を倒した褒美ってやつだ」
 身体が灰になる中で己を倒した桜と彼女と共にいる薊に話した。
「遠慮なく覚えておけ」
「わかりました」
「じゃあな、俺はこれで消えるさ」
 身体は完全に灰になっていた、残る頭の部分もだった。
 急激に灰になっていっていた、そしてその中で。
 残っていた頭も完全に灰になった、そうしてだった。
 烏の怪人も消え去った、灰は風に吹かれて消えた。後には何も残っていなかった。闘いが終わってからだった。
 桜は薊達の方を振り向いてだ、微笑みのままこう言った。
「終わりました、ですが」
「ああ、同じなんだな」
 薊が桜に言葉を返した、真剣な顔で。
「あたし達は」
「では」
「ほら、これだよ」
 薊は右手の掌を胸の高さで緩く開いて上に向けて見せた、その上に赤い炎を出してみせた。それこそがだった。
「あたしは火でな」
「私は水、氷も使えるわ」
「私は土よ」
 菖蒲と菊もこうそれぞれ桜に話す。
「それぞれの力を」
「使えるのよ」
「そうですか、では若しやと思いますが」
 桜は三人の話を聞いてだ、このことを自分から言った。
「本当のご両親はどなたも」
「そうだよ」
 薊はここで桜に自分のことを話した。
「あたし横須賀の孤児院にいたんだよ」
「そうですか、やはり」
「桜ちゃんもか」
「妹が二人いますが」
 しかしだというのだ。
「私だけは両親が違います、本当の両親はわかりません」
「それじゃあ大変よね」
 裕香は自分だけ血のつながっていない家庭だと聞いてこう察した、だが桜はその裕香に笑顔で答えたのだった。
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