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騎士道精神
第四章
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第四章

「ですから。どうなのでしょうか」
「しかしまだ僅かでも残っている筈だ」
「左様ですか」
「そうだ、今度我が国と日本でのレセプションがあるな」
 卿は不意にこのことを思い出したのであった。
「それならばだ」
「それに出席されますか」
「そうする。場所は何処だったかな」
「確か日本でした」
 いきなり遠くの話になった。
「そちらです」
「日本で行われるのか」
「日本に行かれたことは」
「いや、ない」
 それはなかった。実は彼は元々日本にはあまり縁のない人物であった。本当に今はじめて申し出を受けたと言ってもいい程だったのである。
「実はな」
「ではレセプションには参加されませんか」
「これも縁だ。参加しよう」
 これが彼の判断だった。
「是非な。それで話を進めてくれ」
「わかりました、それでは」
「うん、頼んだぞ」
 こうしたやり取りのうえで彼は日本に向かった。同時に八条学園と己の学園の提携も進めるつもりであった。そしてそのレセプションは。
 まずはだ。彼は顔を顰めさせることになった。
 狭い畳の部屋の中でだ。実に窮屈に座っていた。
 スーツで足をまげてその上に座ってだ。顔を紫にさせていた。
 その周りにいるイギリスの政治家達がだ。苦しみに満ちた顔で日本側に尋ねていた。
「あの、これがですか」
「そのお話に聞く」
「茶道なのですね」
「はい、そうです」
 日本の政治家達は涼しい顔で彼等の問いに答える。
「これがです」
「我が国の文化の一つでして」
「ううむ、お茶をこうして飲むとは」
「いや、話には聞いていましたが」
「それでもこれは」
「かなり」
 こう言って誰もが苦悶の中にあった。
 それはロットナー卿も同じで。今にも死にそうな顔になっていた。
 しかし彼は耐えていた。何とかだ。
 日本側がこう言ってきてもであった。
「あの、楽にされても」
「いえ」
 たどたどしい日本語での返事だった。
「それはいいです」
「いいのですか?」
「はい、構いません」
 顔を紫にさせながらも。また言ったのだった。
「これが日本の作法ですね」
「はい」
「そうです」
 その通りだと答える日本側の政治家達だった。
「それはその通りです」
「茶道は正座が基本です」
「ならばです。それに倣います」
 こう言うロットナー卿であった。
「礼儀は守らなければなりません」
「ううむ、凄いですね」
「そこまで仰るのですか」
 日本の政治家達は彼のその言葉に思わず唸った。
「イギリスの作法ではないというのに」
「それでもなのですね」
「その国にはその国の作法があります」
 また言う卿であった。
「ですから」
「成程、よくわかりました」
「そうなのですか」
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