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ロウきゅーぶ 〜Shiny−Frappe・真夏に咲く大輪の花〜
Six

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私は、中学校最後の県大会で大きな失敗をやらかした。

 最後のフリースローでいつものように笑顔をチームメイトに振りまいた自分は、今までの想像を絶する疲労を騙していたことに気づいていなかったのだ。
 その緊張を少しばかり緩めた。それが、体感していた重力を何倍にも引き上げた。
 疲れきった身体は重いボールをネットまで飛ばしきることができなかったのだ。途中で失速し、最高点がネットの縁にすら届かず落下していく。そして、その光景が見える前に私は崩れ落ちたのだ。糸の切れた操り人形のように。
 試合は負けだった。勝負は勝負、フリースローのやり直しなど認められるはずもない。あれだけ出しゃばってチームを鼓舞し盛り上げてきた自分が、最後の最後にチームメイトも応援に来てくれたみんなも裏切った。
 それから、かつての五人がいつまでも一緒に居られないことを知る。ヒナは看護科のある県内でも有名な進学校へ、もっかんはスポーツ特待で全寮制の高校へ。ヒナがバスケを高校進学と共にやめていたことは後になって知ったことだったけれど。


 そしてその年の末、すばるんが、長谷川昴がアメリカに行くことになった。彼が大学1年のことだった。長期の留学で、次に帰れるのは再来年の春と言うことだった。

 『なんでだよ……』
 『ごめんな、真帆……』
 『何でだよ、どうして黙って行っちまうって言うんだよ……っ!!!!!!』

 私は憤慨した。すばるんには高校でもバスケを教えて欲しかったから。とても勝手な話だった。無邪気で身勝手でどうしようもなくお子様な意志だった。


 それでも……


 それでももっかんは待つと言った。私達の最高のコーチが次は自分のために幸せになれるように背中を後押しした。私達の中で一番会えなくて辛いのはもっかんだったのに。


 そんなもっかんを……

 『何でそんなこと言うんだよ!!! ずっと一緒にいるって約束したのに!!!!』

 自分は果てない那由他の時間を待てなかった。もっかんは待つと言った。そしてそんなもっかんを。

 パチン……

 叩いてしまった。それでももっかんは何も抵抗せず一心に私を見つめてきた。逃げたのは私の方だった。
 私はきっと誰よりも弱い。だからもしかしたら今も惰性でバスケを続けているのだろう。やめる勇気もなく、本気で続ける根性もなく。
 すばるんにも、もっかんにも。かつて本気で向き合っていた人達にも本気では向き合えないままに。
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