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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十二話 国防委員長
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俺が動いたが次からは自分で解決しろ。俺を頼るんじゃないぞ。それじゃなくても俺の事を胡散臭い眼で見る奴が多いんだ、痛くもない腹を探られたくない。

「戻ってきた捕虜は軍の方に復帰させます。捕虜という特異な環境での生活から元に戻るには時間がかかる可能性が有る。特に抑留期間が長ければ長いほど社会に適合し辛くなっていると想定されている。カウンセリングは当然の事だが技能訓練等を行いつつ焦る事なく社会に復帰させたい」

「国防委員長の仰る事は理解出来るがそうなると軍の人員削減などはまだまだ先の事だな」
トレルの口調は残念そうだった。多分国防費の削減は難しい、経済開発委員会に回ってくる予算は少ないと思ったのだろう。他にも面白くなさそうな表情をしている人間が少なからずいる。

「その事だが軍は今後五年間で四百万人の技術者、輸送および通信関係者を民間に戻そうと考えている。以前から社会機構全体に亘ってソフトウェアの弱体化が進んでいると人的資源委員長から指摘が上がっていた。国防委員会としても無視は出来ない。なんとか歯止めをかけたいと考えている」
ネグポンが発言すると“ほう”という声が彼方此方で上がった。皆がホアンの顔を見た。ホアンが咳払いをした。

「出来る事なら今すぐ四百万人を民間に戻して貰いたいと言いたい。しかしそれをやれば軍組織が滅茶苦茶になるのも事実だ。五年間で四百万人を民間に戻す、国防委員長からの提案を受け入れようと思う。但し、受け入れるには条件が有る」
ホアンが皆を見回すと会議室に緊張が走った。このあたりが実力政治家の凄味だな。残念だがネグポンにはまだそれは無い。

「和平を結び、戦争を終結して欲しい。戦争が無くなれば技術者を軍に徴用される事も無くなる。技術者達のスキルの向上、蓄積を図れるのだ。ソフトウェアの弱体化を防ぐ事が出来る」
「分かっているよ、ホアン。そのための第一歩が捕虜交換なのだ。必ず成功させる」
トリューニヒトが答えると皆が頷いた。

「しかし、軍は大丈夫なのかね。五年とはいえ四百万人を民間に戻すのだろう。実際に出来るのか?」
シャノンがネグポンに問い掛けた。他のメンバーも首を傾げている。
「現時点で大規模な軍事衝突が起きる可能性は極めて少ないと判断できる。この機会に軍は組織のスリム化と支出の削減を図ろうと考えている」
“オー”とか“ウム”とか声が上がった。歓迎されているぞ、ネグポン。

「先ず動員の解除だが技能や資格の有る人間から民間に戻していく。軍に残った者に対しても技能を習得させる事を積極的に行っていく。人数は減らすが質を向上させる事で戦力の維持を図るつもりだ」
彼方此方で頷く姿が有った。ネグポンも余裕が出て来たようだ。声に張りが出てきた。

「さらに国内に有る八十四ヶ所の補給基地を整理統廃合する。
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