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第四章
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第四章

「飛ばれるのは楽しいことですね」
「はい」
 その通りだとだ。朝彦も言う。
「僕の生きがいです」
「だからこそ飛びたい」
「しかし怖くて」
「楽しい。飛びたい」
 恐怖に囚われている朝彦にだ。さらに言うのだった。
「心から思われていますね」
「絶対にです。飛びたいです」
「そう、迷わずに」
 矢車もだ。朝彦にこの言葉を告げた。
「一直線にです。一途にです」
「飛ぶ。楽しく」
「思われて下さい。心の奥底から」
「わかりました」
「そうして下さい」
 こうだ。何日も言ってだ。そうしてだった。 
 矢車は香我美と共にだ。朝彦がジャンプ台に向かうのを見ていた。そしてだ。
 その彼にだ。ジャンプ台で言うのだった。
「ではです」
「はい、それではですね」
「楽しく飛んで下さい」
「楽しくですね」
「そうです、飛ぶ楽しさだけを考えられて」
 今は飛ぶべきだというのだ。こう何度も強く告げてだ。
 そうしてから彼をジャンプ台に送り込んだ。そして彼は。 
 ただひたすらだ。飛ぶ楽しさを一途に思い考えだ。そのうえでだ。
 一気に飛んだ。そしてだった。
 彼は見たのだ。空にだ。
 無限のだ。清々しさと爽やかさ、そして楽しさを。
 それを見てだ。彼はあらためて知ったのだった。
 飛ぶ楽しさをだ。心にも身体にもだ。再び備えたのだった。
 飛び終えて矢車と香我美のところに来てだ。満面の笑顔で言ったのだった。
「やはり。いいものですね」
「無事に飛ばれましたね」
「見事に」
「はい、できました」
 その満面の笑顔での言葉だった。
「気持ちよく楽しかったです」
「そうですね。実はです」
 矢車がその朝彦に話す。
「岩間さんは一度果たされればそれで全快されるものでした」
「この恐怖は」
「しかし飛ぶことができない」
 そのパラドックスがだ。問題だったのだ。しかしである。
 ここでだ。それでどうするかなのだったのだ。
 矢車が出した治療法はだ。
「暗示をかけたのです」
「暗示ですか」
「そうです。暗示です」
 それでだというのだ。
「恐怖よりも大きい楽しさ、喜びをお話してです」
「それで恐怖を打ち消してですね」
「そのうえで飛んでもらってです」
 そのうえでなのだったのだ。
「一度飛べばそれで消え去るものですから」
「それで暗示をかけて最後までやり遂げて」
 そうしてだったのだ。朝彦に飛ばせたのだ。
 そしてそれは成功してだ。朝彦は満面の笑顔で話した。
「今はもう飛べます」
「心の恐怖は深刻です」
 矢車もそのことはわかっていた。しかしだった。
 その恐怖はどういったものか。それも話したのだった。
「しかしそれはそれ以上のプラスの感情で抑え着せるものなの
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