暁 〜小説投稿サイト〜
少年少女の戦極時代U
オーバーロード編
キカイダーコラボSP編
第38話 呉島光実の良心

[8]前話 [1]後書き [2]次話


 ――REBOOTボタンを押してくれ。
 ジローは今、確かにそう言った。

『ジロー……でもそれはっ』

 リブート、再起動、自分が自分でなくなる恐怖。僅かに話しただけでも伝わった。それをジローは自ら望んでいるというのか。光実が弱いばかりに。

「大丈夫だ」
『ジロー……?』
「ぼくは、ぼくにしかならない」

 彼の瞳は眩しいほどに輝いていた。己の言に嘘などないと訴えていた。

『――分かった。信じさせて。人は、自分は自分のままでいられるって』

 龍玄が足を引きずって立ち上がると、ジローは背中を向けた。龍玄はその背にあるREBOOTボタンを回し、押した。
 がくん、とジローの頭が下を向いた。
 ジローの額から放たれた光が円状に広がった。


「スイッチ・オン」


 光が晴れたそこに立っていたのは、右半身が青、左半身が赤に染まった、機械人間。良心を持つロボット――

『それこそが伝説のヒーロー……キカイダーの真の姿かっ』
『キカイダー……』

 キュイン。キカイダーがハカイダーを見据えた。

『ここからは、機械的に行こうか』







 ――キカイダーの圧倒的な強さに、さすがのハカイダー(正確にはハカイダーの人格である戦極凌馬)も分が悪いと悟ってか逃走を選んだ。

 光実は変身を解き、ジローも人間態に戻った。

(あれがユグドラシルぐるみの実験なのか、戦極凌馬個人の暴走なのか、後で確認して、上手いこと言い訳しとかないと。いやむしろ、これは弱みとして使えるか? 多少無理を通す予定だから、今回の件で言うことを聞かせられないか試して――)

 ブツブツと思考を整理する光実の横、ジローは一点を見るようにして動かない。

「ジロー?」

 キュイン。ジローの首がこちらへ向いた。


「きみは誰だ?」


 ――リブート、再起動。PCなどにおけるそれは、データの消失に繋がることがある。
 決断の対価は、彼自身だった。


「――、思い出したんだね」
「ぼくには大事な使命がある。もうすぐ始まる。巨大な敵が動き出す。ぼくは絶対に守り抜かなきゃいけない」

 胸が痛かった。まるで光実の知るジローのように、目の前の彼は答えたから。

「行くところがあるんだ。大切な人がぼくを待ってる」
「羨ましいよ――」

 待ってくれる人がいて――喉まで出かけた言葉を呑み込んだ。待ってくれる人を自ら切り捨てた光実に、それを口にする権利はない。

 去りゆくジローに、光実もまた背を向けた。そしてまっすぐ前を見据え、歩き出した。


(僕にもREBOOTボタン、あったらよかったのに――なんてね)
[8]前話 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ