暁 〜小説投稿サイト〜
星の輝き
第35局
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ルー、とりあえず日付順に並べていけばいいのよね?」
「ああ、所々ごっちゃになってるからな、まずはきちんと並べないとな」
「でも、これ全部貸し出すの?」
−随分たくさんたまりましたよねえ。
「いや、全部はまずいよなぁ…。特に、こっちの佐為と会ったばかりの頃の棋譜は出せないな」
「え、そうなの?」
「ああ。俺が初心者のころの棋譜がないと不自然だから、それを渡すとなると、前の世界の棋譜になるだろ?俺がだんだん強くなるのと同時に、佐為もネット碁で新しい定石とか今の時代の碁を覚えて強くなった。その後こっちの世界での棋譜になるだけど、佐為は打ち方が昔の虎次郎の頃のままで、新しい定石とかを知らなかった」
「あ、なるほどー。いきなり古い定石ばかりの碁に戻っちゃうんだ」
−確かに、そうなると不自然ですね。
「だろ?だから、最初の半年分くらいは丸まる封印して…、その後も俺がいきなり強くなってるのもあれだから、俺がうまく打てたぶんをしばらく隠して…。やっぱりめんどくさいなぁ…」
「でも、整理は必要だと思うよ?ちゃんとした棋譜の用紙に書けてるのは最近のだけで、ほとんどはノートに書き込んでるんだもん。やっぱり読みにくいよ」
「そうなんだよなぁ。金がなかったせいで普通のノートに書くしかなかったからなぁ」
−ヒカルの字は、きれいとはとても言えないですものねぇ…
「うるさいぞ!ああ、もう、余計なこと言っちゃったなぁ」
「でも、佐為との棋譜をちゃんと記録に残すのは、いいことだと思うよ。とても素敵な碁がいっぱいあるもん!私が打ってもらったのもヒカルに言われてからノートに残してあるから、いずれ棋譜に起こすつもりだよ」
「…まぁなぁ。塔矢があきらめてくれるといいんだけど、そうもいきそうもないしなあ。とりあえず整理しながら、少しずつ抜き出す形にするか。最終的にはやり方を自分で覚えて全部まとめることにして…」

 ヒカルと佐為の対局の回数はかなりの数になる。何しろ、前の世界での2年間に、こちらでは7年以上だ。1日1局としても合計で三千回を軽く超える。実際はそれ以上だ。ヒカルは前の世界で佐為が消えた後、本因坊秀策の棋譜とともに佐為との対局を思い出せるだけ何度も繰り返して勉強していた。そのため、こちらの世界に来た後に棋譜として書き起こすことが可能だったのだ。
 できるだけきちんとした形で整理したいが、すべてを見せてしまうといろいろと不自然な点が多く出てきてしまう。

 膨大な数の棋譜を前に、ヒカルの悩みは尽きなかった。
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