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少年少女の戦極時代U
オリジナル/ユグドラシル内紛編
第55話 本当に欲しかったのは
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い。オーバーロードを探すにも、碧沙が凌馬の手の内である以上、下手に動けない。どうしようもないんだ」

 反発されるだろうと、貴虎は咲を見やった。だが咲は唇を固く結ぶだけで、何も言い返して来ない。
 言い返して来ないことに失望し――貴虎は、自分が咲に期待していたと自覚した。

「私は、ひどい思い違いをしていたらしい」
「お兄さん?」
()()()()()()()()()、お前たちみたいな存在が現れて、何もかも解決してくれると勝手に信じ込んでいた」


 誰よりも、呉島貴虎が、誰かに救ってほしかった。

 常に二者択一を迫られる貴虎に、第三の方法を示してくれる、救世主のような存在を待っていた。悲劇のヒーローぶって、これ見よがしに諦めを呈して、怠惰に待つだけだった。

 思えば葛葉紘汰や室井咲に手を伸ばしたのも、そんな根底の動機があったからだ。貴虎に選択ではないやり方を示してくれた彼らに、貴虎こそが救われたから。


「そっか……そーゆーんでいいんなら、うん、あたしも紘汰くんも、なれると思う」

 咲は貴虎の前まで来ると、彼の手をきゅっと握った。妹とそう変わらない大きさの手。こんな小さなものが何よりも暖かい。

「って、あたしに言えたギリじゃないけど」
「それを言うなら、俺こそそうだ」

 貴虎も、咲も、碧沙のことがあって紘汰への協力を一方的に断った。一度は繋いだ紘汰の手を、手前勝手で振り解いた。

 両者の間に漂う、皮肉な共感の沈黙。それを破ったのは、ヘリポートへ出るドアが激しく開いた音だった。

「ヘキサ……」

 青いお仕着せに身を包んで息を切らしているのは、まぎれもなく、貴虎の妹で、咲の親友だった。
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