暁 〜小説投稿サイト〜
八神 颯介
エリオ・モンディアル
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なかった。 自分の名前では呼ばれず、訳の分からない番号や 人形、ゴミとまで呼ばれていた。 実験と称して体中に電撃を受け、切り刻まれ、殴 られ、蹴られる。 お風呂なんてなく、トイレは牢獄にしか見えない 自室の隅にある簡易式のみ。 男の人からは気味の悪いものを見る目で見られ、 女の人からは変な目を向けられる。 そしてクタクタになった体を引き摺られて部屋に 戻され、ようやく一日の食事を与えられる。 ペースト状の味がしない、栄養があるのかも疑わ しい餌。 それを生きるために、毎日貪るように食べ続け た。

苦しみ、悲しみ、嘆いた。 なんでいきなりこんなことになったんだ。 父と母は、なぜ助けに来てくれないのか。 僕は…、どうして…。 そう思うと、僕の心はどんどん荒んでいった。

だから、最初は全く信じられなかった。 けたたましいサイレンが突然鳴り響き、僕はいつ もより早く目が覚めた。

なんだろう、うるさいな。 今日もどうせ「痛い事」をしてくるんだ。 休んでる時間くらい、妨げるな。

そう思ってもう一度目を閉じると、外に気配を感 じた。 誰だかは分からない。 いつも感じる嫌な視線じゃない。

(誰だろう…? ………、まぁ、誰でもいいか。 どうせすることは同じなんだ)

そう思って、僕は目を閉じたまま動かないでい た。

次に僕が感じたのは浮遊感だ。 僕は外にいた誰かに背負われ、運ばれている。 いつものように引きずるんじゃない。 労わるように、優しく運ばれている。

おかしい、こんなの僕が受けるものじゃない。 なんだろう、何が起きてるんだろう。 僕は誰が運んでいるのか確かめるために目を開け ようとしたが、すぐにやめた。 昔の事を思い出したんだ。

(…あぁ、前やったやつか。 二度も効くと思っ てるのかな…)

数か月前、地獄のような環境の中で、唯一僕に対 して優しくしてくれる人がいた。 柔和な笑みを浮かべて、優しく汚れた僕を洗って 清めてくれた人。 僕はその人を簡単に信用した。 この人がいれば、この地獄も乗り越えられる。 そう思った。

しかし、数日経ったある日。 いつものように僕は暴行を受けていた時、あの優 しかった人が紛れていた。 僕はその人に助けを求め、手を伸ばした。 あの人なら助けてくれる、そう思った。

だがその人は、僕に優しく微笑みかけると、伸ば した僕の手を踏み潰した。

「ひ、ぎ…!? なん、でぇ…?」

「はぁ? あんたのその顔が見たかったからに決 まってるでしょ! ハハァッ! アンタ、今の顔 爆笑ものだわ! ウザくってキモくって…、最 悪!!」

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何 度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度 も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も 何度も何
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