暁 〜小説投稿サイト〜
とある仮想世界、少年と青年の物語
誰かの為に生きることを知った青年の話
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
の身を神田の頬に摺り寄せた。

「ティム……おかえり、よく帰ってくれたね」

涙を流しながらリナリーがティムに手を伸ばすと、今度はその指に身を寄せた。
瞬間、音声が流れ始めた。

『…ティム、あんまり動かないで。あ、映像は要らないからね。……大丈夫?ちゃんととれてる?』

ーーーなつかしい、少年の声。神田とリナリーは目を見開いた。

『…ただいま。遅くなってしまって、ごめんなさい。
今まで、ずっと迷惑をかけてしまっていました。…本当に、ごめんなさい。皆さんが、僕を生かそうと尽力してくださっていたの、知っていました。ありがとう。
そんな皆さんに何ができるのか、ずっと考えていたんです。…そして、この戦争を終わらせること、だと。そして、それができるのが、…そのために生まれたのが僕だと、教えられたんです。これで、もうアクマが生まれることもない。ーーーこんな哀しいことは、起こらない。
もうすぐ、全部終わります。だから、最期に、皆に言っておきたくて。
僕の、家族になってくれて、ありがとう。ホームはとても、暖かいところでした。
そして……いってきます。』

リナリーはその場に崩れ落ちた。いつも冷静な神田でさえ、顔を歪めている。
方法はわからない。どう、終わらせたかなんて。でも、それは、まだ幼さの残る少年がホームに戻ることが不可能になるものだ、ということは…理解できた。


「…そうか、やはり…アレン君が。…ありがとう、お疲れ様…」

コムイに報告をすると、彼もまた顔を歪めて、切なげに呟いた。

「これは、皆で聞こう。アレン君も、それを望んでいるはずだ。…神田君、それまでティムを預かっていてくれないかい?」
「…ああ」
「今、任務に出ているファインダーがいるんだ。あと数日で帰ってくる筈だから、…それまで、よろしくね。…2人とも、報告ありがとう。ゆっくり、休んで」

コムイの言葉で2人は司令室を後に、それぞれの自室に入った。
神田はすぐにベッドに腰を降ろし、ティムキャンピーを指に乗せた。ーーーアレンがそうしていたように。

「…あいつは、何のために…生きて、たんだろうな」

頬を一筋の涙が伝う。それを皮切りにして、堰を切ったかのように涙が止まらない。
今まで認めまいとして、頑なに現実から逸らして目の前に突きつけられた事実。
声を殺して静かに啼く神田を慰めるように、ティムが擦り寄った。瞬間、先程聞いたアレンの遺言が流れ始めた。

「家族になってくれて…か」

いってきますを言うなら、ただいままで言えよ馬鹿モヤシ、と胸の内で呟く。自分より3歳も年下で小さな少年は、存外自分の中で大きな存在となっていたことに、ようやく気付いた。
再び訪れた沈黙に、そろそろ寝るか、と体を動かそうとした時。

『……
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ