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SAO編−白百合の刃−
SAO15-偽った双子
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 失ったものは、もう二度と拾うことはできない。
 過ぎた時間を元に戻すことなんてできない。
 だからこそ、大切にしなければいけないものだってある。それを失えば大切さのありがたさを知ることはできるが、それは失う前に知らなければならないものであり、失った時には手遅れになり、後悔だけが残る。
 それはなんて皮肉なものなんだろう。失いたくないって思った時にはもう失っていたなんて、悲しすぎて虚しさを感じさせてしまう。
 でも、それはしょうがないことになってしまうのだろう。
 だって、失った時に失いたくないって強く思うのは失う前からは何も気づいてない、愚か者であるからだ。



 兄とドウセツは、私とアスナを見送ってからグランザム西門へと向かった。二人の姿が完全に見えなくなるとアスナは不機嫌を隠さず、拗ねた顔で文句を言い募る。

「もう! なんで一緒じゃないの! これじゃあ、キリト君と一緒にいる意味ないじゃない!」
「まぁまぁ、そう怒らないの。私達は、二人が無事に帰ってくることを気楽に待とうよ」

 不機嫌そうに拗ねているアスナを慰めながら頭を撫でる。プクーと頬っぺたが膨らむアスナかわいい。
 やりぃ。兄ザマァ。

「なんだかんだで、アスナと二人っきりって、新鮮だよね?」
「そう?」
「そう思わないの?」
「うーん……なんでだろうね」

 アスナは割と兄と一緒にいることがあったから、その兄の双子である私と一緒にいてもあんまり違和感がしないから新鮮だと思わないのかな? 双子なのに似ることのない、一卵双生児だけど兄妹なのは変わりないからまったくの別人と思われていないのもあるかもしれないな。意外とドウセツよりも連携取れたりして。

「そう言えばキリカちゃんも……ギルド苦手だっけ? ごめんね、キリト君と一緒に巻き込んじゃって……」
「ううん、別にいいよ。アスナが謝る必要はないって。私もいつかギルドに入って、いろいろと集団行動とかに慣れなきゃいけないと思っていたこともあったしね。今回の件で強制でも丁度いいかな」
「キリカちゃんもそう言ってもらえると助かるけど……」

 アスナの瞳は外さず、真っ直ぐに見つめてくる。その瞳には私が映し出されている。正直、悪い感じはしないが、あんまり良い気分ではなかった。

「あ、アスナ?」
「……ねぇ、キリカちゃん」
「あ、はい、なんでしょうか?」
「……キリト君はギルドを……人を避けるの……? キリカちゃんはどうして……ギルドを避けながらも……ソロからパーティーを組もうとしたの?」

  何故、良い気分じゃない理由がわかった。それはアスナが私に訊ねてくる言葉は心にも響いてくるからだった。そして私だけじゃなく、私自身、過去の私までもアスナの瞳に映ったように見えなくもない気がしたか
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