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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
七月二十日:『千里の道も一歩から』
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がーっ!」
「ふぎゃ〜〜っ?!」

 キレた美琴が、電撃で黒子をこんがりときつね色に焼く。周りが何事かと、それを眺めていた。

「――一体何事ですか、騒々しい」

 そこに響いた、怜悧な女性の声が響く。腹の底からの、強い声だ。

「忘れ物を持ってきてみれば――何事ですか、と問いました……古都」
「お、お祖母(ばあ)様……」

 目の前には(かんざし)で髪を結い上げた、藤色の和服の老年の女性。
 古都から『お祖母様』と呼ばれた女性は、意思の強そうな瞳で古都を射竦めた。

「何と言う為体(ていたらく)ですか、古都! あれほど、あれほど蘇峰家の末席として強く在れと命じたと言うのに……」
「あっ――ち、違います、お祖母様! これは、その」

 それが、糾弾に歪んだ。明らかに『負けている』様相の孫に向けて。
 それは、弁解の余地すら無く。

「言い訳は結構です。そんな事だから、多寡だか大能力者(レベル4)になった位で自慢気に現れたりするのです――――!」

 蔑むように、老婦人は何かを足元に投げ渡した。それは――――どうやら、音楽を聴く為の端末機器。

「頂点に立てと、そう命じた筈です。少なくとも、世間と比べれば矮小なこの学園都市(せかい)の中でくらい――――超能力者(レベル5)にくらいはなりなさい!」

 吐き捨て、誰も彼もが圧倒された中で、嚆矢を振り払った古都がノロノロと端末機器を拾う。
 酷く、それは、酷く惨めな姿だった。さながら、日の当たらぬ葉っぱの裏側を這う芋虫(イモムシ)のように。

「申し訳、ありません……お祖母様」

 漸くの声に、答えはない。女傑は踵を返し、情けないと断じた孫の前から去っている。

「…………」

 何とも言えない気まずさが、場を支配する。一人、また一人と無遠慮な衆人が失せていき――残ったのは嚆矢と古都、美琴と黒子と、春生女史のみ。

「……先輩」
「ん――ああ、何だ?」

 俯いた後輩の問い掛けに、努めて語調の抑揚を抑える。何の感情も籠めない事で、全ての言葉に対応できるよう。

「貴方は――――誰の味方ですか」
「――――――――」

 悲痛とすら言っていい、古都の問い。それに対する、嚆矢の答えは――――只一つだ。

「決まってんだろ――――俺は何時でも、女の子の味方だ」

 言い切った。断言した。彼にとっては――赤枝の騎士団(レッド・ブランチ・チャンピオンズ)の末席たる『対馬 嚆矢』にとっては、『誓約(ゲッシュ)』に裏打ちされた真摯な言葉。
 だが、悲しいかな。それは現状、到底魔とを得た言葉足り得ず。

「……ですよね。そうでした。そうだ、僕は――――そんな貴方が、死ぬほど大嫌いだったんだ!」

 吐き
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