暁 〜小説投稿サイト〜
打球は快音響かせて
高校2年
第三十一話 これが三龍野球
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
第三十一話



コキッ!
カコッ!

チョンと合わせたようなスイングで、三塁側にファウルが続く。しぶとくしぶとく食らいつく。

「よっしゃー行こうかー!次こそはブッ飛ばすでー!」

口ではこのように叫んでいる癖に、実際はとにかく空振りしない事を考えているようなスイング。捕手の川道はそんな枡田の様子にイライラを溜め込んでいた。

(そないに言うならフルスイングしてこいやボケ。鬱陶しいなぁこいつ、やたらうるさいし)

業を煮やした川道はインコースに構える。力でねじ伏せてやろうと考える。

「!!」
「デッドボール!」

しかしファウルで粘られていた事に力んだのか、精密機械のような城ヶ島のコントロールが乱れ、枡田のユニフォームをボールがかすめる。大げさにのけぞった枡田は球審のデッドボール判定に対して、喜びを表すように一塁へ猛ダッシュで出塁して見せた。

「またまた当たってまいましたわ!ボールはS極、俺はN極、まるで磁石ですね!俺とボールは相思相愛!」

一塁ベースコーチに手袋とエルボーガードを手渡しながら、枡田は自身の死球の多さをネタにして大声でおどける。これにはぶつけた本人の城ヶ島もかなりイラっときて、枡田に殺意のこもった視線を向けた。

(さぁ、チャンスが出来た。仕掛けるぞ。)

三龍ベンチでは、浅海が腕組みしながら不敵に笑っていた。



ーーーーーーーーーーーーーー



浅海がベンチからサインを送る。
川道はその様子をマスク越しに睨みつける。

(さっきチャンス逃した後やさけ、ここは気をつけたいわなぁ。逆言うと、三龍はここで点を取りたい訳や。)

川道の視線は、今度は一塁ベース上の枡田へと移る。

(こいつの足も速いさけなぁ。走られたら、刺せる率は五分五分やわ。でも、ここで走ってくるかいな?大事な大事な勝ち越しのランナーやで。)

川道の視線が一周して左打席の越戸へと戻ってくると、越戸はバットを横に倒して持っていた。

(そやな。バントよな。)

川道の腹は決まる。

(バント、やらして、二塁で殺すで。)

バシッ!
「ストライク!」

初球のストレートを、越戸はバントの構えで見送った。一塁ランナーの枡田が大胆なリードオフで、揺さぶろうと構えてくる。

(はいはい、バントなんは分かってるから。大人しくコツンと転がせや。)

川道はすぐ城ヶ島にボールを返し、テキパキとサインを出す。サインは高めストレート。強くバットにぶつけて、後はピッチャーの城ヶ島のフィールディングに期待する。

(バント処理は得意やけん。バットを引かれたら困るけ、お前らあんまり前出過ぎんな。やらせるんが大事や。)

城ヶ島はバントシフトをとろうとするサードの西
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ