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ボロボロの使い魔
『なし得たものは』
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だが、少年が目指したものは余りに眩しく
偉大すぎた
…やがて、少年は記憶の輝きから目を剃らすようになった

そんな自分をモンモランシーが気にかける事が辛かった 彼女が自分に好意を抱いてくれている事は嬉しい
けれど、彼女が見ているのは所詮昔の自分に過ぎない
彼女を救った言葉もギーシュ自身のものではない

『魔法が全てじゃない』

そう言っておきながらも、結局自分には『魔法』しかない
ドット止まりの『力』それが自分の全てでしかなかった だから、距離をおいた
過去の自分まで失望され軽蔑される事が怖かった

ルイズの事も嫌いだった
彼女は自分より数段酷い、なにせ『ゼロ』なのだから
何一つ魔法を成功させる事もできず馬鹿にされ続けていた彼女
だが、それでも尚貴族たらんとするルイズの姿を見ていると 夢から逃げた自分が余りに情けなく惨めに思えた

「ギーシュ…」

振り向かない、声の主はわかっているから
普段は貴族の誇りがどうだと言いながらも逃げ出した学友達と違い彼女は残った

…本当は何もかも話したい、自分は君が記憶している大した男ではなく、ただのちっぽけで惨め な奴に過ぎないのだと
…けれど、できない
そうするには何もかもが遅すぎた

「っ…!」

彼女の言葉を振り切るようにギーシュは走り出す
杖も棄てて魔法も使わず、ただがむしゃらに
圧倒的な力を誇る『仮面ライダーに』立ち向かう為に?
嫌…違う
自分は結局逃げているのだ
好きだった少女の視線に耐えられず
夢を諦めた惨めな自分から逃げ続けている
自分の弱さを認めるのが嫌で
自分が『彼』のような存在にはなれないことが悔しくて ただ、ただずっと自分は今まで逃げ続けていた




バックルの側面にあるレバーを引く
同時に現れるオリハルコンエレメント
蒼く輝く壁画、それを潜ることでギャレンの姿を解除する橘
途端によろめき、ふらつく体を驚異的な精神力で押さえつけ、橘も走り出す
メイジとしてではなく、一人の男として決着をつけようとしている少年に応える為に
自分もまた『仮面ライダー』としてではなく『橘朔也』として戦うために

「ぅああああああああっ!」

「…ふっ!」

瞬間、交差する影
その勝負もまた一瞬だった、全身ズタボロになりながら、それでも尚、橘のボディブローはギー シュの意識を断ち切る威力を有していた

「畜生…!…強く…なりたい…!」

倒れる寸前、少年が流した涙にどれほどの思いが込められていたのだろうか
自分がそれを知るよしはない、だが

「ギーシュっ…!」

モンモランシーが駆け寄りギーシュを抱き止める
彼には支える人がいる、それを省みることが出来るなら


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