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噛ませ犬
第一章
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てきたのだった。彼は青のジャージだ。
「あの、新条さん」
「ああ、何だ?」
「今日もですか」
「そうだよ、前座だよ」
 笑ってだ。彼は両手にそれぞれ十キロのダンベルを持って上下させながら言った。
「今日もな」
「それでやっぱり」
「噛ませだよ」
 やはり笑ってだ。こう言う新条だった。
「チナに負けてくるよ」
「そうですよね。けれど」
 顔を曇らせてだ。兆州は新条に対して言うのだった。彼は彼で縄跳びをしながらだ。新条に対して言う。レスラーはとにかくトレーニングだ。
「いや、俺はその」
「メインイベンターだからだってのか?」
「はい、社長には維新軍、造反勢力のメインイベンターってことで」
 そうしたポジションでだというのだ。

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