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女の首
第六章

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「それでいくか」
「はい、それでは」
 親父も笑顔で頷く、そして。
 また首が出て来た、それを見てだった。
 王からだ、親父に言うのだった。
「ところで喉が渇いた」
「はい」
「この店の酒を貰えるか」
 王は笑顔のまま親父に言うのだった。
「そうしてくれるか」
「うちの店のですか」
「そうだ、それとだ」
 王は徐達も見回して言う。
「君達も飲みに来ているな」
「まあ居酒屋に来ていますから」
「それは」
 言うまでもないことだ、実際彼等は王が帰った後でまた飲むつもりだった。それでこう彼に答えたのだった。
「そのつもりです」
「料理を肴に」
「それならだ。金は私が出す」
 王はこう彼等に言った。
「ここで君達と会って話したのも縁だ、共にこの首を見つつ飲もうではないか」
「何と、先生の奢りで」
「共に酒をですか」
 天下に知られた高名な学者である王とだ、誰もが喜ばずにいられないことだった。
「それはまた何と」
「よい話ですな」
「それでいいか」
 彼等にもだ、王は問うのだった。
「早速飲むか」
「はい、それなら」
「今から」
「役所で飲む酒は好きになれない」
 王はここに来た時に自分を出迎えた役人達のことを思い出しながら述べた。
「公の場ではな」
「飲むのならですか」
 徐が王に問うた。
「こうした場ですか」
「そうだ、せめて飲むのならな」
 堅苦しい場所ではなく、というのだ。
「こうした場所がいい。ではいいか」
「先生がいいと仰るのなら」
「そうだよな」
 除と親父はお互いに顔を見合わせて話した。
「わし等にしても」
「それで」
「よし、では決まりだな」
 王は二人の言葉を受けて笑顔で頷いた、そうしてだった。
 周りにだ、満面の笑顔で告げた。
「よし、ではな」
「はい、一緒にですね」
「飲んで楽しみましょう」
 こうして除達は王と共に飲むことになった、皆その女の首が出入りするのを見つつ楽しく飲み時を過ごした。
 もう武漢にこの店はないという、時代の流れの中でなくなったのだろう。そして王陽明のこの逸話は史書にも残されていない、だが面白い逸話であり彼の気難しそうな顔とは別の顔を伝えられればと思い書き残しておく、少しでも多くの人が読んでくれれば幸いである。


女の首   完


                 2013・12・23
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