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獣退治
第一章
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                  獣退治
 厄介な任務だった、実に。
 イギリス空軍に所属しているアーサー=クレイドル大佐は上官であるリチャード=ノルバート少将に命じられてすぐにこう反論した程だ。
「あの、その任務は」
「無理か」
「無謀です」
 こう強く言うのだった、その鍛えられた逞しい顔を強張らせて。
「今確かに我が軍は攻勢に出ていますが」
「それでもか」
「そうです、あの列車砲は敵地の奥深くにあります」
 今イギリス軍を含めた連合軍は確かに攻勢に出ている、ノルマンディーへの上陸も成功しパリも解放した。そのままドイツへの国境に進んでいる。
 だが、だ。それでもだというのだ。
「まだドイツには力があります」
「確かに彼等はしぶといな」
「それでその敵地奥深くに入り列車砲を破壊するなぞ」
「しかしだ」
 だが、だとだ。ノルバートは己の席の前に立ち力説するクレイドルに言うのだった。
「あの列車砲は今後我が軍の進撃の邪魔になる」
「だからですか」
「君と君の部隊に破壊を命じるのだ」
 戦術上の必要性からだというのだ。
「是非共な」
「空から攻撃を仕掛けてですか」
「その通りだ、君達の乗るモスキートでな」
 それでだというのだ。
「頼むぞ」
「わかりましたと言うしかですね」
「我々は軍隊だ」
 ノルバートの今の言葉は断固としたものだった。
「だからだ」
「ここはですか」
「そうだ、命令だ」
 まさにそれだというのだ。
「ではいいな」
「わかりました」
 クレイドルも軍人だ、そのことが身体に滲み込んでいない筈がなかった。彼にしても大佐までになっている人間だ。命令は絶対だった。
 それでだ、ノルバートに敬礼で応えた。そしてだった。
 直属の部下達を作戦会議室に呼んでだ、机の上に地図を開きそのうえで彼等に対して話した。
「我々の今回の作戦任務はだ」
「このポイントのですか」
「こいつを叩くのですか」
「そうだ」
 その通りだとだ、そのポイントの列車砲を指し示して話すクレイドルだった。
「ここに我々の今回の攻撃目標がある」
「列車砲ですか」 
 部下の一人シャーロック=チューダーが言ってきた。階級は大尉だ。
「列車砲自体への攻撃は楽ですが」
「空からはな」
 列車砲は空からの攻撃には全くの無力だ、このことについては普通の地上目標を攻撃することと同じだ、しかしなのだ。
「しかし敵もわかっている」
「守りはある」
「そういうことですね」
「ここにだ」 
 クレイドルは持っているペンでその列車砲があるポイントの北から西までを弧を描く様に示した、その辺りにだというのだ。
「高射砲の陣地がある」
「やっぱりそうですか」
「そこにありますか」
「そうだ、あの高射砲がな」
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