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ニヒリズム
第四章

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第四章

「だから退屈が紛れるんだよ」
「生きるか死ぬかの緊張だからね」
「そうだね。とにかくだよ」
 ここでだ。こんな話になった。
「後は二人」
「そして弾丸は一発」
「どちらかが死ぬけれど」
「それでもいいね」
「いいさ」
 まずはだ。伯爵が答えた。
「少なくともタスカーを忘れられるからね」
「言ったね。それじゃあね」
「まずは君だよ」
「そしてその後に」
 言いだしっぺの彼、灰色の目の彼にも声がかけられる。
「君だ」
「果たして生き残るのはどちらか」
「そしてタスカーから解放されるのはどちらか」
 生き残った彼等が笑顔で言っていく。楽しむ笑顔で。
「見せてもらうよ」
「逃げたいのならそれでいいけれどね」
「逃げないさ」
 伯爵がだ。毅然とした顔で述べた。
「僕は絶対にね」
「言ったね。じゃあやるんだね」
「このルーレットを」
「やるよ。二つに一つ」
 伯爵も言う。毅然として。
「生きるか死ぬか。最高じゃないか」
「最高だね。タスカーから解放されるのなら」
「それなら」
「そうさ。だからやるさ」
 内心恐怖を感じていたのは事実だ。だがそれ以上にだ。
 伯爵は退屈から逃れたかった。そしてタスカーから解放されたかった。それでだ。
 彼はだ。卓に置かれた拳銃を手に取りだ。おもむろに。
 こめかみに当ててだ。そうしてだった。引き金に指をやった。
 一気に引いたつもりだが動きがやけに遅い様に感じられた。そうして。
 引き金を引き終えた。そのやけに遅い動きが終わった。その次の瞬間に音がした。
 金属音だけだった。伯爵は冷や汗と共にその音を聞いた。それからだ。
 上を見上げて大きく息を吐き出してだ。友人達に述べた。

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