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業平と狐
第二章
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第二章

「お姿確かにお受け致しました」
「うむ」
 業平はそれを確かめて頷く。
「確かにな」
「して次は」
「御歌を」
 狐達は業平を見て言う。
「宜しいでしょうか」
「歌だな」
「はい」
「貴方様のもう一つのものを。頂きとうございます」
「わかった。では」
「筆はこちらに」
「そして紙も」
 狐達は早速単の袖の下から筆と紙を出してきた。まるで最初から持って来ていたかのようであった。
「どうぞお使い下さい」
「済まぬな。では」
 彼はその紙と筆を受け取った。そしてさらさらと書きはじめる。
「そなた達に贈る歌じゃ」
「私共にですか」
「だからわざわざここに来たのではないのか?」
 業平は驚く彼等に対して問う。
「そうだと思っていたが」
「まさかそのような」
「私共に貴方の御歌を」
「気にすることはない」
 業平はそう言って狐達を宥めた。
「都からここまで来てくれたことには礼を述べたいからな」
「はあ」
「交わることはできずとも。これならばよいであろう」
 そう言いながら紙に書いていく。
「歌ならば。人も狐も関係ない」
 これは業平の考えであった。
「歌を解する心は同じじゃ。それを通じ合わせようぞ」
「業平様・・・・・・」
「できたぞ」
 書き終えてこう言った。
「これじゃ。どうじゃ」
 筆を返し書いた紙を狐達に手渡す。
「そなた等への歌じゃ」
「これは・・・・・・」
「これならどうじゃ」
「この御歌を私共に」
「そう、そなた等だけに」
 業平はまた言った。
「渡そう。それでよいな」
「はい」
「有り難き幸せ」
 狐達はその歌を受け取り深々と頭を下げる。
「まさかこの様な御歌を頂けるとは」
「思ってもおりませんでした」
「何、よいのだ」
 業平は優しく微笑んで狐達に応えた。
「これも縁だからな」
「縁、ですか」
「私は暫くここに留まる」
「摂津にですか」
「都からは。暫く離れたいのだ」
 そう言って寂しい顔になる。宮廷のことに疲れたのかはたまた恋に破れたのか。業平の美貌と歌をもってしてもどうにもならないものが恋である。宮廷のことは歌とはまた別のものであった。
「ここで。川を見ていたい」
 その笑みも寂しげなものになっていた。
「左様ですか」
「都には妻がいるがな」
 そこでふと気付いた。
「妻に便りをな。頼む」
「お便りですか」
「いいか」
「それでしたら」
 狐達はそれを快く引き受けた。
「都に戻りましたら」
「うむ、頼むぞ」
 業平はまた書いた。それを狐達に手渡す。
「ではな」
「はい」
「ところで」
 ここで二匹のうちの一匹が業平に尋ねてきた。
「どうした?」
「いえ、奥様を愛しておられるのですね
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