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幸せな夫婦
第六章
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第六章

「それはわかるで」
 そのことを静江に話すとこうした言葉が返ってきた。二人は今喫茶店でコーヒーを飲んでいた。何処かハイカラな趣味を楽しみながらであった。
「うちの人も一緒やから」
「南海を応援しとるん?」
「阪神や」
 だが静江の答えはこうであった。
「うちの旦那は阪神一本やりやで」
「そうなんか」
「そうやねん。けれどあれやろ」
 コーヒーに砂糖を入れながら困った顔を見せてきた。
「阪神はずっと巨人と戦ってるやん」
「うん」
「負けるのも多いから。かなり大変なんよ」
「何であんなに阪神に打ち込むんやろ」
 阪神ファンの熱狂はこの時代からだ。むしろ今よりもずっと激しい。何度も問題を起こしてきているし暴動のような事態になったこともあった。それが阪神ファンだ。
「阪神ファンって」 
 芳香にとってはそれが不思議なようだった。顔を少し上にあげて首を傾げさせていた。
「病み付きになるらしいで」
「病み付きなんか」
「そうや。阪神っていうのはな」
「お酒と同じなんかな」
 ふとこう言ってきた。
「それやと」
「むしろお米らしいで」
 静江はそう答える。
「ないと困る。あって自然なもんやで」
「自然なんか」
「そや。うちの亭主の言葉やとな」
「それやったらわかるわ」
 芳香はその言葉に納得したように頷いてきた。
「それも白いお米やろ」
「そうやね。白いお米や」
 やっとそれが何とか食べられるようになってきた時代であった。なおこれがさらに豊かになっていく。しかしそれはまだ誰も想像だにしなかった。
「うちの亭主の言葉はな」
「うちの旦那もそうなんやろな」
 芳香はここで康友についてそれを当てはめさせてきた。
「やっぱり」
「まあそやろね」
 静江はその言葉に頷いてきた。
「応援してる球団はちゃうけどな」
「一緒なんやね、そこがちゃうだけで」
「阪神は特別やろけどな」
 ただしこう付け足された。
「特別なんか、あそこは」
「阪神はかなりちゃうで」
 また述べる。
「何か頭おかしいようなところがある。阪神だけやろな」
「そうなん」
「旦那さん南海やろ」
 静江はそれを問うてきた。
「確か」
「そやけど」
 実は芳香は野球に関してはそれ程詳しくはないのである。関西の私鉄がそれぞれ球団を持っていることは知っていたが。この時代は鉄道会社と映画会社が球団を持っていたのである。あとはマスコミだ。
「あそこも結構あれやで」
「怖いんか」
「それも目茶怖い」
 静江は忠告するように述べる。
「阪神はセリーグやろ」
「うん」
 流石にこれは知っている。阪神がセリーグにあって南海がパリーグにある。流石にこれ位は知ってはいた。それ程詳しくはないにしろだ。
「それで
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