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美しき異形達
第四話 第二の怪人その十

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「ということは」
「あの尻尾に毒があるよな」
「そうね、絶対にね」
「周りは」
 薊は顔を怪人に向けたまま目だけで周囲を見回した、裕香は顔全体を使って見回す。その結果わかったことは。
「誰もいないわ」
「そういう時を見計らってなんだな」
「薊ちゃんを襲撃に来たのね」
「何ていうかストーカーかね」
「刺客じゃないかしら」
 そちらではないかとだ、裕香は薊に言った。
「この場合は」
「刺客かよ」
「ええ、そんな感じがするけれど」
「言われてみればそうかもな」
 ストーカーよりもそちらに近いとだ、薊も同意した。
「こいつはな」
「ええ、そうよね」
「まあとにかく出て来たからにはな」
「闘うしかないわよね」
「そうするさ、今からな」
 こう応えてだ、そのうえで。
 薊は何かを出してきた、それはあの七節棍だった。この得物を出して構えてからまた裕香に言うのだった。
「裕香ちゃんは後ろに下がってくれよ」
「うん」
「危ないからな」
「気をつけてね」
「ああ、闘うからにはな」
「特に注意するのはね」
 何かをだ、裕香は蠍怪人を見つつ薊に忠告した。
「毒針よ」
「まず第一はそれだよな」
「それにね」
 それに加えてだった、裕香は毒針だけを見てはいなかった。蠍を象徴すると言ってもいい禍々しいそれよりも。
「左手の鋏も」
「それもだよな」
「蠍の武器はこの二つだから」
「それで怪人になっているこいつもな」
「ええ、同じだからね」
「そうだよな、蠍だからな」
「この二つには注意して」
 毒針が特にだが鋏にもだというのだ。
「そうしてね」
「わかったよ、それじゃあな」
 薊は裕香に応えそのうえで怪人と対峙した、その中で。
 まずは蠍が仕掛けてきた、音もなく間合いを寄せてきて。 
 左手の鋏で薊の首を狙って来た、挟んでそのうえで断ち切る、鋏の使い方をそのまま仕掛けてきたのだ。
 だが薊はその動きを見切っていた、それで。
 すぐに屈みかわし怪人の腹に棒の突きを入れた、まずはその一撃だった。
 これで怪人の動きを止めその顎を下から棒で叩き上げた。顎が急所だと思ったからだ。
 確かにこれでダメージを与えた、だが。
 怪人は倒れない。今度はその右手で殴り掛かってきた。
 薊はその拳を左肩に受けた、鈍く重い痛みが来た。
「くっ・・・・・・」
「薊ちゃん!」
「いや、平気さ」
 それを受けてもだとだ、笑って返す薊だった。
「これ位はさ」
「本当に?」
「いつものことだからさ」
 だからだ、平気だというのだ。
「拳法をしてたらな。それにな」
「それに?」
「モトクロスでこけたらな」
 その時はというのだ。怪人の左足のソバットを右手で防いで凌ぎつつ言う。
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