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第一章 〜囚われの少女〜
魔法仕掛けの部屋
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う。この本は、探している内容を映し出す、魔法の本なのだろうか。だが、今はそんな事はどうでもよかった。
 本を持った時、本能が本を開けるなと言っている気がした。本を開いてしまえば最後、まるで本に生気を吸い取られてしまうかのような気がしていた。
 だが、ここで尻込みをする余裕はない。そもそも悪魔であり、自らを魔王とさえ思う程の自信が今まであった。しかし魔力を失ってしまえば、自分はただの人間と同じものなのだろうか。自分は一体今、何者となっているのだろう。男にはそんな考えがよぎるが、それは恐れではなかった。いや、恐れはないというならすでに本を開けていただろう。
「だいじょうぶ。こわくないわ」
 少女の声が聞こえたかと思うと、導かれるような思いで分厚い本を開いた。
「!? これは……」
 開いた本の中には、闇色の世界があった。すさまじい風がおこるのとともに、向こう側に吸い込まれる。そしてそのまま、闇に取り込まれてしまった。
 そのままゆっくりと、閉じていく本。しかし本は、そこで閉じるより前に少女までも飲み込もうとする。
「え? ちょっと待って……私はいいから!」
 それからさらに本の中から、悪魔の手が伸びてくる。道連れにしようというのか、油断していた少女は足首をつかまれる。
「――ひゃんっ!?」
 すさまじい本の引力に加え、男につかまれたまま引きずり込まれる。とうとう侍女のキャスリンまで本に閉じ込められてしまった。
 そして部屋は何事もなかったかのように静寂を取り戻す。ただの一冊、床に赤い本がぽつんと残されただけになった。


                             −第二十一幕へ−

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