暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
少女の慟哭
[1/11]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 行軍の兵数は一万と五千、それに加えて生き残った趙雲隊の二千であった。
 先頭を馬に乗って進むのは仁徳の君とその頭脳伏竜。いまから戦の最先端に向かうとは思えない程に穏やかな雰囲気で会話を楽しんでいた。
 兵達はいつもの二人の様子に和み、自身の守るモノを確かめ合う。徐州に来てから集めた新参の兵達は全て先に送っており、ここにいる兵達は全てが反董卓連合までに集まっていた者達であるゆえ。
 ふと、一陣の緩やかな風が吹き抜け、軍の中程で馬に跨る軍神の黒髪を撫でた。

「相変わらず愛紗の髪は美しい。私も自分の髪には自信を持ってはいるが……さすがにそれには完敗と言わざるを得んなぁ」

 ほおと感嘆の息をついて、隣で馬を進める星は珍しく真っ直ぐに褒め言葉を口にする。
 それを受けて、愛紗はぶすっと仏頂面に変わり、

「……何故、星は残らなかったのだ」

 星の褒め言葉を意にも返さずに流し、強い瞳で見つめて自身の不満を口にした。

「またそれか。武人とは、戦場にて働くモノ。一人でも多く救い、一刻でも早く戦を終わらせる為に決まっているさ」

 飄々と言って退けた星は愛紗の向ける瞳を受け流すように視線を逸らす。
 軍の編成をしている時、本城に帰ってきた桃香から星も戦に同行すると聞き、愛紗はまず反対した。
 愛紗なりに星の心を思っての事。幽州にて、秋斗を見る星の瞳がどのようなモノであるのか、一番知っていたのは愛紗だった。
 ましてや敗北して間もなくで戦に赴こうと考えるなど通常では有り得ない。身体的にも、精神的にも無理をさせる事は必至。秋斗と共にゆっくりと本城で休息を取ってから、出来るなら手助けをしてくれたらと考えていた。
 桃香が承諾した為に渋々であるが愛紗も認めたが、せめて理由くらいは聞いておこうと出兵前の星に問いかけていた。
 対して、星の答えは先程と同じモノで、愛紗にとってはどこか違うと感じるモノであった。
 会いたくないはずが無い。辛くないはずが無い。哀しくないはずが無い。だというのに、星は昔のように飄々と隠し通してしまう……

「……なぁ星。私は不器用で、彼のように何も聞かずにお前の心を汲み取ってやる事は出来ないのだ。会いたい想いを抑え付けてまで、何故そうも無理をしようとするか聞かせて欲しい」

 だから真っ直ぐに愛紗は伝える。少しでも心の負担を減らせるようにと。事実、星の顔色はそれほど良くは無い。毅然とした態度で問題は無いように示しているが、戦に赴くにしては些か不安が残るのだ。例え、星とその部隊は働く事が無いとしても。
 秋斗ならば聞く事もせずに好きにしろというだろう。後の一言で本心を言い当てて、戦場につけば無理やり休ませるように内部で糸を張る。
 それは愛紗には無理であった。だから強引に、愚直に支える事を選んだ。
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ