第二話 目覚める炎その十一
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「その特許でお金があるからね」
「豪邸にいるんだよな」
「うん、二人共八条グループの関連の場所で働いてるよ」
「じゃあこっちの学園でもかよ」
「いや、八条学園では働いていないよ」
これは二人共だというのだ。
「父も母もね。ただ収入はね」
「ご両親もか」
「うん、あるから」
それでだというのだ。
「僕も経済的には困っていないよ」
「いいよな、それって」
「いいかな」
「やっぱりお金持ちっていいだろ」
金があることだけで幸せだというのだ、薊は金には執着しないが今は世の中のよくある考えから言ったのである。
「それだけで」
「まあね。お金があるとね」
「困らないよな」
「経済的にはね。ただ」
「ただ?」
「祖父はね」
ここでもだった、智和は顔を曇らせてだった。そのうえでその目に暗く嫌悪を抱くものを見つつ薊に言ったのだった。
「あまりね」
「好きじゃねえとか?」
「いや、尊敬はしているよ」
このことは事実だというのだ。
「それでも。完全な人はいないよ」
「何かよくわからねえな」
「わからないかな、今は」
「ああ、先輩の言うことがな」
どうもだとだ、薊は率直に述べた。
「悪いけれどさ」
「いいよ、今はわからなくても」
智和も薊に強く言うことはなかった、今はこう言うだけだった。
「それでもね」
「やっぱりわからねえけれど今のままでいいんだな」
「うん、そうだよ」
「じゃあいいけれどさ。けれど先輩の家か」
「八条学園の近くにあるよ」
「それで豪邸なんだよな」
薊は智和にこのことを問うて確認した、そのことが事実かどうかと。
「そうなんだよな」
「そうだよ、洋館だよ」
「いいよな、洋館って」
「趣きがあるからかな」
「ああ、神戸らしいよな」
神戸は海外から来た人間が多い、この辺りは横浜等と同じだ。それで洋館も多くそれが神戸に相応しいというのだ。
「面白いよ」
「そうなんだ、まあその洋館にもね」
「来ていいんだな」
「何時でもね。ご馳走もさせてもらうよ」
「牛丼とかあるかな」
「ははは、牛丼だね」
「あたしあれ好きなんだよ」
牛丼が好きだというのだ、だから吉野家で特盛十杯を食べたのである。
「他にも色々と好きだけれどな」
「そうなんだね、もっとも洋館でも和食を食べているよ」
「じゃあ牛丼もか」
「食べる時があるよ」
実際にそうだというのだ。
「僕も結構好きだよ」
「いいよな、じゃあ先輩の家に行ったらな」
「牛丼だね」
「食っていいよな」
「シェフに伝えておくよ」
智和は温和かつ知的な笑みを浮かべて薊に答えた。
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