第二話 目覚める炎その十
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「悪いけれど男女交際はな」
「そちらは興味がないかな」
「あるけれどさ、ついでに言えば外見よりも中身を見るぜ」
男は顔ではないというのだ。
「ただ、いきなり付き合うとかはさ」
「しない主義だというんだね」
「相手の中身をよく見てさ」
性格、それをだというのだ。
「そこからだよ」
「付き合っていい相手かどうかを見て」
「それからにしてるんだよ、コクる時はな」
「その言い方だと君から言うんだね」
「そうだよ、そう考えてるよ」
「積極的にだね」
「待ったりとか受身はガラじゃないからな」
だからだというのだ、この辺りにも薊の性格が出ている。
「そういうのもそうしたいな」
「自分からだね」
「そうだよ、それで先輩が今ここに来た理由は」
「何ともないかな、今は」
「何とも?」
「うん、何もなってないかな。若しくは」
智和は言葉を続けていく、薊にそれがまつわる様なことを。
「何かが来たとか」
「何かって何だよ」
薊は智和のその問いに目をしばたかせて問い返した。
「化けものとかかよ」
「何も来ていないんだね」
「お客さんは先輩だけだよ」
これが薊の返事だった、智和への。
「それで何ともないよ、健康なままだよ」
「君が健康であることはわかっているよ」
「だったら何だよ。あたしが不治の病とかでお医者さんがそれを伝えに来るとかじゃないよな」
「その可能性はあると思うかな」
「いや、ないだろ」
とてもだとだ、薊は智和のことばをあっさりと否定した。
「あたしに病気とかはさ」
「そうだよ。君は間違いなくね」
「健康そのものだよな」
「過ぎるね」
智和はこの時はだった、一瞬だが。
「怪我とも病気とも無縁だろうね」
「実際風邪一つひいたことないよ」
「そうだと思っていたよ、いいことだよ」
「馬鹿は風邪ひかないってね」
薊はにかっと笑ってまた自分からこう言った。
「いいことだよな」
「君は馬鹿でいいというのかな」
「お利口よりも健康馬鹿の方が好きだしさ」
それでだというのだ。
「あたしはこれでいいんだよ」
「そう言うんだね」
「ああ、まあ今のところ身体は何もないしさ」
「何も来ないんだね」
「そうだよ、全然な」
「ならいいよ、ただ」
智和は今度は優しい、受け入れる様な顔で微笑み薊に告げた。
「僕のところには何時来てもいいから」
「?何時でもかよ」
「僕の家のことは聞いてるかな」
「何でもすっげえ金持ちらしいな」
薊はクラスで聞いたことをそのまま智和に返した。
「祖父さんの特許とかで豪邸なんだろ」
「祖父、ね」
ここでだ、智和はというと。
祖父の名を聞いてだ、一瞬だが顔を曇らせた。薊もそれに気付いて言おうとしたが彼はそれより前にだった。
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