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真・恋姫無双 矛盾の真実 最強の矛と無敵の盾
反董卓の章
第24話 「……もう、決めたから」
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の発起人は袁紹であったはずであり、本来ならばその功も袁紹が受けるはずではなかったのか、と。

 だが、袁紹自身はこの場におらず、袁術すらなんの褒賞もなかった。
 各諸侯にはそれぞれ新しい号、新しい土地が与えられていく。

 そして――

「劉玄徳殿!」
「はいっ!」

 最後に劉備が呼ばれ、献帝の前で頭を垂れる。

「連合に参加し、その武功、誠に見事! よって、彼の者に鎮軍将軍の号を与えるものとする!」
「謹んで、拝命仕ります」

 その言葉に周囲がギョッとして目を見張った。
 あからさまに他の諸侯より恩賞が低いのである。

 いや、むしろ不当な扱いとも言って良い。
 何しろ他の諸侯は、位だけでなく土地も増えている。
 宝物を下賜された諸侯も居る。

 にも拘らず、劉備だけが武官の地位だけで恩賞とされたのだ。
 しかも、鎮軍将軍とは、将軍とは名ばかりの明確な役割のない将軍職。
 むしろ名誉職といった意味合いが強く、その権限もほとんどない。
 格式・権限的には、下手な雑号将軍の方が上なほどである。

 つまり、僻地に左遷されたどころか、窓際に等しい扱いと言っても良い。

 だが、そんな扱いを受けたにも拘らず、劉備は涼しい顔で頭を下げた。
 その様子に、読み上げていた文官自身すら訝しげな表情を浮かべている。

「……玄徳」

 突如、御簾の向こうから声がする。
 それが献帝が発した言葉と誰もが気づき、改めて目を見開く諸侯たち。
 唯一人、劉備だけが静かに顔を上げた。

「はい」
「……朕を恨むか?」

 年若い、いや少年の声に、ここが謁見の間であるのを忘れ、周囲がざわめく。
 だが、名指しされた劉備は、静かにその顔を上げた。

「いいえ、献帝陛下……私にはもったいないほどの過分な褒賞でございます」
「………………そう、か。なにか申したいことがあれば申して良い。朕が赦す」

 献帝が重ねた言葉に、劉備は首を振る。

「いえ、なにもありませ………………いえ、では、一言だけ」
「…………うむ。申せ」

 周囲が息を呑む。
 劉備がきっと罵声を浴びせるのではないか、悲しみを訴えるのではないか、周囲の諸侯と文官たちは身構える。

 だが――

「どうぞ……どうぞ、心安らかにお過ごしください。陛下の大事な『モノ』は全て守られます。これからも、ずっと……」
「………………………………」

 予想に反した劉備の言葉に、周囲は訝しむ。
 いや、その内容の意図がわからず、逆に怪しんだ者もいる。

 だが、そんな中……劉表と曹操だけは、互いに目を閉じ、黙したままだった。

「………………そうか。そうである……か。そうであってほしい。そうであって……」

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