反董卓の章
第23話 「…………メロン?」
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―― 一刀 side 虎牢関 ――
「かず……と?」
俺の眼の前に居る相棒――盾二が、呆然と呟くように俺の名前を呼ぶ。
その顔は、つい先日まで幼さを残したような風貌じゃなかった。
そう――俺の覚えている盾二ではなく、少し成長した……いや、違うな。
少しだけ荒んだような、顔つきが険しくなったような、そんな顔。
俺より少しだけ精悍だった顔は、もう立派な『大人』の顔だった。
そう、思ったんだが――
「あー久しぶり……ってぇ、泣くなよ!?」
貂蝉の後ろから顔を出した途端、その顔が見事に崩れた。
まるであの時の……俺と初めて会って挨拶した時のように。
目を見開いたまま、大粒の涙を流して顔を歪ませる。
涙を拭おうともせず、俺を見続けながら震えるように泣く。
ああ……やっぱこいつ、盾二だわ。
普段は冷静でリーダシップがあるくせに、実は人一倍泣き虫で情緒不安定……もとい、感情豊かな男。
誰よりも仲間を大切にし、誰よりも命を大事にするくせに、味方のためなら自分自身の業として相手を殺すことも厭わない男。
仲間が死ねば冷静に事後処理する姿を他人に見せ、その裏で一人墓の前で懺悔するように泣く男。
全てを背負い、その重さに懸命に耐え続けようとする愚直な相棒……まさしく盾二だ。
実は、俺の知っている頃より数年経っているという事実に、少し躊躇していたのだ。
それはここに辿り着き、盾二の姿が変わっていたことで、否応なしにそれを実感したのだが……
(変わってないな……)
盾二を見ながら、俺の記憶の中の盾二と『今』の盾二が重なった様に感じる。
だから……思わず出た苦笑が、安堵の溜息を上手く隠してくれた事に、少しだけ救われた思いがした。
「あー……まあ、大体の経緯は貂蝉から聞いたよ。本当に迷惑かけた。ありがとな」
「……いい、んだ……っ、お前、が……生きているなら…………」
「あーあーあーもー……戦場で泣くなよ。ったく、姿は恰幅良くなったってのに、中身が本当に変わってないし」
「は、はは……まったく、だな……っく……はは……」
「…………はあ」
こいつは本当に。
俺の前では、本当に手のかかる奴だ。
だから俺は……昔からよくやるように、盾二の肩を組んだ。
「俺は生きてる。だから泣くな」
「……ああ………………ああ…………」
仲間が死んだ時、よくやる慰め方。
母親すら知らない俺達は、互いが互いのただひとつのぬくもりだから。
「……ありがとよ、兄貴」
「……っく……ふっ…………こ、こっちこぞ、ずずっ…………生きていてくれて、ありがとう。兄貴……」
互いに兄と呼び合う。
これ
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