暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのは 〜黒衣の魔導剣士〜
As 09 「舞い降りた紫炎」
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 背筋が寒くなる冷気と、硬く研ぎ澄まされた氷の刃のような触れるもの全てを切り裂く響きが少女の声にはあった。私を見ている瞳にも、傷つけることへの抵抗があるようには全く見えない。
 この少女は、迷うことなく有言実行できる。そう直感的に判断した私は、彼女から距離を取った。行動の幅を増やすことも理由だが、夜月を巻き込まないようにしたのも否定しない。

「すまないが、多少痛い目に遭ってもらう」
「……やめておきませんか?」
「……落ち着いているように見えるが、怖気づいたのか?」

 その問いへの答えは、首を横に振るという仕草だった。視線で返事を返すと、少女は温かい感情が宿っている眼差しを夜月へと向けて口を開く。

「私の目的は彼の回収です」
「だから戦う理由はないとでも言いたいのか? 先ほど怒りの炎が燃えていると言っていたのは私の空耳か?」
「いえ、空耳ではありませんよ」

 淡々とではあるが、はっきりとした口調で返事が返ってきた。その口調のまま彼女は続ける。

「私の中には確かな怒りが存在しています。しかし、これは私怨です。戦いで傷つくのは仕方がないことだと理解していますし、ここ最近の彼はどことなくおかしかった。今日ここであなたと会っていたのも、何か理由があったのでしょう。きっと彼は戦うことも覚悟していたはず……あなただけを責めるのは間違いというものです」

 少女の言っていることは正しいのだろう。
 だが、少女の年代としてその答えは間違っているのではないだろうか。
 見た目からして夜月と大して変わらない年代。それに最近の夜月がおかしかったと言うあたり、主ほどではないだろうが親しい間柄のはずだ。もしかしたら、夜月と共に闇の書の情報を集めていた者かもしれない。
 夜月も年の割りに冷静で物事を悟っているが、彼女の場合は度が過ぎている。私が彼女の立場だった場合、怒りに身を任せて斬りかかっていてもおかしくない。

「見た目に反して大人な考えだな……一方で冷たい奴だとも思うが」
「できれば挑発はやめてもらいたいですね。普段は乗ったりしませんが……今は一瞬でも気を緩めれば、あなたのことを撃ちかねないので」
「敵なのだから撃てばいいだろう」
「そうですね……ですが一度でも本気で撃ってしまえば歯止めが利かなくなります。そしたら私は……あなたのことを殺してしまうかもしれない」

 少女は、私でさえ思わず背筋が寒くなるような冷たい微笑を浮かべた。彼女の怒りが具現化したように、周囲には炎と化している魔力が発生している。
 怖気づいてしまったのは昔よりも人間らしくなってしまったからかもしれない。だが今はそんなことを考えている場合ではない。
 ――この少女……テスタロッサよりも上だ。
 まだ戦ってすらいないが、それだけは直感的に分
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