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美しき異形達
第二話 目覚める炎その五

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「黒髪を短くしてて可愛い感じだから」
「その娘が広島なのよ」
「あそこから来てるのよ」
「成程ね、全国から集まってるってのは本当なんだな」
 薊は食べつつも腕を組んで考える顔になって言った。
「広島からも来てるんだな」
「北海道から来てる娘もいるわよ」
「沖縄からもね」
 北と南の両端からもだというのだ。
「来てるわよ」
「ちゃんとね」
「海外からの留学生も多いし」
「色々な人がいる学園なのよ」
「そうか、だから広島の娘もか」
「そう、いるのよ」
「勿論大阪の娘もね」
 お好み焼きのもう一つの聖地の娘もいるのだった。それでお好み焼きについてよく論争が起こるというのである。
「まあどっちも美味しいけれどね」
「大阪も広島もね」
「そうなんだな、あたしはお好み焼きっていったらさ」
 横須賀で育ってきた薊はこう言うのだった。
「大阪かね」
「横須賀ではそっちなの?」
「そっちが主流なの?」
「いや、孤児院で出るのがそれだったんだよ」
 大阪のお好み焼きだったというのだ。
「実はさ」
「それでなのね」
「薊ちゃんは大阪派なのね」
「そっちになるのね」
「まあ広島の方も食ったことあるけれどさ」
 そちらもだというのだ、薊も結構色々なものを食べているのだ。それはお好み焼きにしてもそうなのである。
「大阪の方が多いな、食ったのは」
「それでどっちが美味しいと思うの?」
 裕香は禁断の、究極の質問をした。
「大阪と広島」
「そこでどっちかって行ったら洒落にならないよな」
「言った瞬間に派閥が決まるわ」
 まさにだ、それでだというのだ。
「大阪派か広島派か」
「だよな、やっぱり」
「だからそこは言わない方がいいから」
 裕香は要するにだった、派閥には加わるなというのだ。派閥に加わると何かと厄介なことになるからであろう。
「絶対にね」
「だよな、やっぱり」
「うん、こうした場合はどっちも美味しいって言おうね」
「どっちとも言えないか」
「智ちゃんは仕方ないけれど」
 その広島の娘はというのだ。
「生粋の広島っ娘だから」
「もう派閥は決まってるんだな、その場合は」
「大阪の娘達もね。もっとも言い合うのはお好み焼き限定だから」
「他のことでは仲がいいんだな」
「そうなの、お好み焼き以外のことでは仲がいいから」
 派閥はあってもだ、それはお好み焼き限定だというのだ。
「安心してね」
「ああ、多いに安心したよ」
 弁当を食べ終わりだった、そうして。
 薊は今度は水筒のお茶を飲みながらだ、こう言ったのだった。
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