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乱世の確率事象改変
久遠の理想に軋む歯車
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 朱里の一声に文官たちも一様に首を縦に振って頷いた。朝議はこれにて終了とするの声を桃香が上げ、

「ありがとう。無理言ってごめん。じゃあ、準備して来るね」

 居並ぶ者達に感謝と謝罪を口にし、柔らかく微笑んだ桃香は少し速足でぱたぱたと駆けて行く。
 それを見送った二人は、文官たちが会議場から出て行ってから、少しだけ厳しい面持ちとなり相談を始めた。

「私の隊が動けるだけの糧食ももうすぐ集まる。彼と入れ替わり、休息として公孫賛様の元へ向かわせるというのはどうだろうか?」
「それがよいかと。先に伝令でこの情報を伝えます。ただ、桃香様は関わりが無かったのでそこまでですが……秋斗さんはさすがに……」

 この情報を聞いた時の秋斗の様子を想像して朱里と愛紗は悲しみに瞳を染めた。
 牡丹自身が避けていたので秋斗以外の劉備軍の面々は大きく関わってはおらず、心に走る痛みは小さなモノ。しかし秋斗は近すぎた。口げんかばかりしているのに実は真名を許し合っている仲であった事を二人は知っている。星や白蓮と同じ痛みを感じても不思議で無いのは予想に難くなかった。
 悲哀にくれる状態で戦場に立ち続けるのは難しく、徐公明という主要人物にもしもの事があったならこの軍の士気はどん底まで下がる。それなら、生き残った友の無事を目にして少しでも精神状態を落ち着けてから戦って貰えればと考えての事。
 朱里は彼の事を心配して気分が沈んで行く。何も出来ない自分が口惜しくて、悲しくて。

「公孫賛様や星が無事な様子を見て、互いに痛みを共有して少しでも心が癒されてくれればいいが……」

 そこで朱里は少しだけ心にもやが掛かり、卑怯な考えが頭に浮かぶ。
 傷ついた彼を癒せるのならこちらを向いてくれるのではないか、と。
 瞬時に、直ぐにふるふると頭を振り、正々堂々親友と戦わなければと朱里は黒い感情を心の隅に追いやり、

「なら雛里ちゃんも呼び戻して私と交代して貰いましょう。孫権軍を追い返した後、現在駐屯している袁術軍の数はそう多く無いらしいので追加の兵を送るにしても、孫策さんが加勢に来るにしてもしばらくの時間が出来ます。雛里ちゃんも戦場と内政の両立は初めてで疲れていると思いますし。まだ内部の安定は私と雛里ちゃんの予定水準に達していませんので本城を開ける事は出来ませんが、秋斗さんと雛里ちゃんが帰って来てくれるのなら南側の民達の慰撫に桃香様が出向くのも一つの手です。鈴々ちゃんはこちらに帰すよりもあちらに残りたがるでしょうからそのまま居て貰うのが最善かと」

 昏い感情を向けてしまう自分への戒めの意味も込めて朱里は愛紗に提案した。 

「分かった。桃香様が帰還してすぐに行動出来るよう、私達も仕事に励むとしようか」
「はい。桃香様にもその件は伝えておきましょう
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