第三話
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人には本分というものがある。
人それぞれの成すべきこと。もともと備わっていた性質。
それを超えようとすればしっぺ返しを受けることもある。
学生の本文であれば学ぶことであり、大人であれば社会の運営や家族を養うための労働であるかもしれない。
武芸者であれば都市の治安や民を守ることであろう。
その役割にあった、適した働きというものがある。
その上でレイフォンは思った。
念仏にしか聞こえない授業。右から左へ抜けていく講師の言葉。書き写しただけで意味不明な文字の羅列。
ああ、自分の本分は武芸者だったのだと。
クラスの名簿を片手に眺める講師を見て、今更ながらに強くそう思う。
「……うーんと、アルセイフ君でいっか。アルセイフ君、ここの答え分かる?」
流石にこれがわからない人はいないよね。そんなノリの声に指名され空虚となっていたレイフォンの意識が戻る。
隣にいるクラリーベルは頬杖ついて面白そうにこちらに視線をやり、前の席のルシルは指で何かサインを出しているが全く意味がわからない。
――分かりません。
何かを悟ったレイフォンの声が教室に響いた。
「おい、大丈夫か」
昼休憩の時間。レイフォンにとっては癒しとも一時の息継ぎとも言える時間だ。
一時間ほどあるこの時間、学生は昼食を食べるのが一般的だ。レイフォンたちもそれに習い昼食を食べている途中だった。
寝坊でもしなければ基本的にレイフォンとクラリーベルの昼食は弁当であり、食べる場所は教室が大抵で偶に外だ。教室の場合は前の席のルシルも参加する。パンを齧りながらルシルに言われた言葉にレイフォンは疲れた視線を返す。
「駄目だよ。慣れはしたけど」
「本当に勉強ダメなんだな。オレより耐性がないやつ初めて見たぞ」
「これでも頑張ってるんだけどね」
だが、その頑張りも余り意味を見せない。最初の頃から比べれば意識が飛ばすにノートをちゃんと取れるようになっただけ進歩しているがその程度だ。
学校が始まって既に日数も経ち、生活リズムも慣れた。だがそれは勉強になれたのとは別の話だ。最初の初期的なおさらいの部分はまだギリギリ理解が出来たが、進むにつれレイフォンの理解の範疇を超えて行った。
「一応言っておきますが、板書を写すだけで頑張っているとは言いませんよ。寝ないのは当然ですし」
「だけって言うなだけって。それでもオレ達からしたら頑張ってるんだぞ」
クラリーベルに対してのルシルの言にレイフォンは無言で力強く頷く。そんな二人にクラリーベルは悲しいものを見る瞳で見る。
レイフォンは一般人への認識を改めていた。今までずっと武芸をして来て生きてきたが、武芸者でない人たちは皆こんな勉強をしていたのだ。レイフォンは
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