第一話 赤い転校生その八
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「参った、御前凄いな」
「有り難うございます」
にかっと笑ってだ、着地した薊は副部長に答えた。
「いい稽古をつけて頂いて」
「いやいや、それは俺の方がだよ」
「副部長さんがですか」
「俺も棒には自信があったがな」
その男らしい、昔のスポ根漫画で出る様な顔で話す。
「御前の動きはそれ以上だな」
「ずっと前からやってるせいですかね」
「横須賀にいた時からか」
「はい、棒術はずっとやってるんです」
「それでか」
「ええ、ただあたしの使ってる棒は」
ここでだ、薊は道場の壁に立てて置いてある棒を見た。その棒は。
「あれですけれどね」
「あの棒か」
「そうです、あれはまた特別でして」
今二人が使っている道場の練習用の棒ではなくというのだ。
「面白いんですよ」
「面白い?どんなのだ?」
「ちょっと使ってみていいですか?」
「ああ、見せてくれ」
そうしてくれとだ、副部長も答える。それを受けてだった、
薊はその自分の棒、紅蓮の炎の様に紅く塗られた棒を手に取った、そのうえで演舞をしてみせる。演舞は速さも身のこなしもまさに達人のものであり部員達が見ても驚嘆するものだった。
しかも只の驚嘆では済まなかった、何と。
その棒は普通の棒ではなかった、七つに別れて。
薊はその七節の棒を自由自在に操ってみせた、それを見てだった。
部員達は再び驚きこう話すのだった。
「おい、何だあの棒」
「三節棍じゃないぞ」
「もっと凄いじゃないか」
「七節?」
「そんな棒があったのか」
「また凄い棒だな」
「しかもな」
そのだ、七節の棒をなのだ。
薊はまるで自分の身体の様に操っている、棒は蛇の様ですらある。
その動きを見てだ、彼等は言うのだ。
「あんな棒を昔から使っているのか」
「こりゃ相当な強さだな」
「棒ってのは節があると独特な動きになるからな」
だから三節棍があるのだ、それが七節になると。
「あれだけ器用に使えるのか」
「殆ど蛇だな」
「生きものみたいだぜ、あれ」
「あれはもう別格だな」
「相当な強さだぜ」
「そうだね」
部長もだ、その薊を見つつ部員達に応える。
「彼女の強さは相当だよ」
「ですよね。動きもいいし」
「棒術にかけては」
「うん、ただね」
ここでだ、部長はこう言った。
「あの娘は」
「あいつが?」
「あいつがどうしました?」
「何かを燃やしているみたいだね」
薊自体を見ての言葉だった。
「そんな気がするよ」
「それって着ている服が赤いからじゃないですよね」
「髪の毛や棒の色とかじゃ」
「それとは別ですよね」
「別のことですよね」
「うん、何かね」
やはり薊を見ながら話していく言葉だった。
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