暁 〜小説投稿サイト〜
Myu 日常編
城島 冥星は人生を謳歌する
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 城島冥星は、人生を謳歌している。自分には財力があり、権力があり、また生まれ持ったカリスマ性があることを自負している。だからこそ、努力という文字は己にとって無関係であると知っている。
 人間という生き物は単純だ。己のように何もしなくとも全てを手に入れられる者。汗水垂らしながら働き、それでも欲しいものに手が届かない凡夫。
 後者でなくてよかった。常々そう思う。なぜなら僕の夢はカリスマニートだからだ。カリスマニートとはどういった者であるかをここで説明するには残念ながら作文用紙が足らないため、省略させてもらうが、つまりは飯を食って寝るだけの生活を永遠に繰り返す素晴らしき日々のことである。何の生産性もなく、作ってもらったご飯をおかわりしても怒られることなく、昼まで寝ていても拳骨を振り下ろすゴリラのいない生活。妹から、ゴミを見るような目で見られることのない生活、は別に気にしていないからいい。
 つまり、僕は何もしたくない。故に、将来の夢はカリスマニートなのである。これは確定された未来なのであり、誰にも我が覇道は邪魔できないのである。これを読んだ先生やゴリラは間違いなく僕を叱るだろう。だが決した僕は屈しない。なぜなら、ニートとは社会のゴミだからだ。ゴミが何をしようが勝手だ。僕はゴミであることを受け入れているのだからそれでいいのだ。僕が何もしなくても世界は回っている。それでいいのだ。これでいいのだ。
 敢えてもう一度言わせてもらう。僕の夢はカリスマニート。ただのニートではない。すべてのニートの上に立つ、王の中の王なのである。刮目せよ、愚民ども。
五年三組 城島 冥星



「ぎゃはははははははははは!! いーひっひっひっひ!!」

 気品も教養もない下衆な笑い声が放課後の校舎に響き渡る。場所は体育館脇の男子トイレ。掃除したくない場所ランキングナンバーワンに常にランクインしている。ここを訪れる者は限られている。
一つめはいじめだ。誰に近寄りたくないということは誰も来ないということ。陰湿な輩が集うにはうってつけの場所なのだ。
 二つめは掃除当番に抜擢された哀れな男たち。たかがデッキブラシ程度で落ちるはずのない汚れをひたすら磨かなくてはならない苦痛。この学校の先生たちは我々を囚人か何かと勘違いしているのではあるまいかと、冥星は常々疑問に思っている。
 三つめは、誇り高き罰則という名のトイレ掃除だ。これは非常に名誉なことなのだ。世間に対し反旗を翻した英雄が受ける罰。もちろん冥星が受けているのはその誇り高きトイレ掃除だ。今日も落ちるはずのない染みをひたすら磨く。なぜなら自分の行為に決して後悔などないのだから。
「お前もこりねぇやつだな冥星! 先生怒らせて楽しいか!?」
「楽しいわけがない。ただ、俺の高尚な理想論を理解できないことが、悲しい」
「ぎゃ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ