After days
挿話集
妖精達の凡な日常B
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ちょっとした騒ぎがありつつも、買い物を終えたセインはアシュレイの店からは少し離れたイタリアン調のレストランで軽い食事をしていた。
このままゲームプレイを続けるならばログアウトしてリアルで食事をとるべきだ。セインはそこのところを疎かにしないタイプのVRMMOプレイヤーだったが、先ほどのこともあって食欲があまり無い。
シウネーまで付き合わせるのも何だったので、彼女には一度昼の休憩を取って貰う事にした。
そう言う訳でセインの向かい側の席には意識の抜けたシウネーのアバターがいる。
雑踏の中を吹き抜ける風がシウネーのロングヘアーをサラサラと揺らし、その静かな寝顔を覆い隠した。
(……何だかこうやってじー、と見ているのはイケナイ事のような気がするなぁ……)
思わず、その整った顔立ちを隠してしまった髪を払い除けようと身を乗り出して手を伸ばす。
ログアウト中の意識の無い他人のアバターに手を触れるなどという非マナー行為は親しい間柄でもタブーだ。
しかしこの時、セインの頭からその事はすっぽりと抜けていた。
あまりにシウネーとの時間が自然で、心地よくて、無意識に体が動いていた。
絹のように柔らかなそれを指先でサッと肩に払う。
「ハッ……??」
正気に返った所で硬直。慌てて身を引こうとしたところでタイミング悪くシウネーが目覚めた。
「…………」
「…………」
両者はかなりの近距離で見つめ合っている。体勢としてはセインが片手をシウネーの肩に置き、シウネーはそんなセインを上目遣いで見上げていて、心無しか彼女の視線には何かを期待するような成分が混じっている。
ーーー当の相手であるセインはどう考えても言い訳出来ない状況で思考が停止し、生来の鈍感さも合間ってそれに気が付いていないのが現状だが……。
「あの……セインさん……?」
「っ??……な、何でしょう??」
何でしょうも何も現在進行形でハラスメント行為を行っているのはセインの方なのだが、そもそもシウネーがこの行為を勘違いしていた為にその事を突っ込まれる事は無かった。だが…………
「その……ここは人目が多いので、出来ればもう少し静かな場所が……」
「へ?……あ、ち、違います!すみません。失礼しました??」
頬を染めてモジモジし出したシウネーを見てようやく己のした事を再認識したセインが飛び退くように離れ、深々と頭を下げた。このレストラン、値段も安く、席もたくさんあるので気軽に入って時間を潰す事が出来るのだが、つまり常にそれなりのプレイヤーがたむろっている。
端から見れば頬を染めた美人に男が頭を下げている光景は、つまりはそうゆう事にしか見えない。
すなわち、ナンパかプロポーズ。事実、辺りのプレイヤー達は密かに聞き耳を立てたりしている。
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