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たすけ
第十三章
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第十三章

「有り難いことだよ」
「お腹のことはいいのですね」
「いや、全くね」
 いいと仰るのだった。
「関係ないよ」
「そうですか」
「それよりも生きていられるだけ誰かの為に動きたい」
 その言葉には遥かな先を見るものがあった。
「それだけだよ」
「では今もですね」
「うん。そう思っているよ」
 また僕に述べてくれた。
「そうね」
「わかりました。その御言葉」
「わかってくれているのは嬉しいけれど」
 ところがここで急に照れ臭そうに笑われてきたのだった。
「いや、こんな話ね」
「どうかされましたか?」
「詰まらない話だよね」
 その照れ臭そうな笑みで僕に言ってきたのだ。
「こんな話。面白くないよね」
「いえ、それは」
 とんでもないことだった。話を聞いていて引き込まれてそこから離れられない程だった。何が面白くないということがあるのだろうか。
「そんなことはありませんが」
「だといいけれどね」
 僕の今の言葉に幾分か気持ちを元に戻されたようだった。
「こんなことでも貴方の心に残ってくれれば」
「残っていれば」
「それだけで嬉しいよ。僕はね」
 三神さんは最後にこう仰った。そこで時間になり僕はお寺を去ることにした。するとそこでお寺の電話がなり三神さんが出て話をされて。急にいそいそと外に出られるのだった。
「どちらに?」
「いや、見送りはできなくなったよ」
「といいますと」
「ほら、三丁目の岡本さん」
「ええ、あの人ですか」
 あそこにお婆さんがいるのは知っている。
「そこの猫が子供を産みそうでね」
「猫がですか」
「すぐにお手伝いに行って来るよ」
 こう言って出られるのだった。
「ほら、あそこのミケ」
「あのメス猫ですか」
 ミケとはいっても白猫である。それでどうしてミケというのかは名付け親であるそのお婆さんが知っている事情である。僕はよく知らない。
「そうなんだよ。だからすぐに行ってね」
「お手伝いをされるんですね」
「こういうのも大事だから」
 こう言われるのだった。
「だからちょっと行って来るよ」
「はい、それでは」
「悪いね、本当に」
 重ね重ね僕に謝ってきた。
「何分すぐらしいから本当に」
「いえ、まあそれは」
 送り迎えまでしてもらうと流石に悪いのでこのことはよかった。
「別に僕は」
「また今度うちに来てね」
「はい」
 その言葉には笑顔で頷くことができた。
「それじゃあ」
「待ってるからね。それじゃあね」
 こうして三神さんは急いでその三丁目の岡本さんのお家に行かれた。思えばこういう人だからこそ人だすけができるのかも知れない。また元からそういうものがあったからこそその夢に出て来られた方も三神さんにそういうものを見せられる
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