世田谷東署落ちこぼれ事件簿1−5
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捜査はまた振り出しに戻った。残るは葬儀社の線だけとなった。
「時間がないぞ」
「はい」
山本刑事と純平は葬儀社の事務所のある下北沢に茶沢通りを車で向かった。
当日現場にいた社員の内の二人は、今日が友引だった為都合よく事務所にいて事務作業していた。
その二人は会社に長くいる信頼の置ける社員だと社長が話した。二人の社員にも話を聞いたが社長の言った通り怪しい点は何もなかった。
「ところで当日現場には社員の方が確か三人いらっしゃいましたよね」
「三人・・・ああ、バイトの」
「バイト」
「そうでした、当日はもう一人アルバイトが行ってました。ちょっと待ってください」
葬儀社の社長はデスクに戻り、直ぐに書類を持って現れた。
「バイトの川合清一。あの日はもう一件葬儀が入ってまして途中で二時間ほど一人そっちの現場に行かせましたので、補助のバイトを加えて三人で対応させてました。そうだったよな」
「ええ」
「バイトですか」
「バイトは補助ですから荷物を運んだりする作業だけやらせてます。そうだろ」
社長は社員の一人に確かめた。
「はい」
「それじゃバイトが棺の蓋を開けるなんて事はないですかね」
「えッ、えぇ・・・」
「どうかしましたか」
山本刑事は社員が口ごもったのを見逃さなかった。
「一度だけ・・・火葬場への出棺時間が迫って時間がおしていたのでバイトの川合くんに棺に釘を打つ前に棺の中に余計な物が入ってないか確かめる様に指示しました。申し訳ありません」
「その時、何か入ってたとか」
「入っていたら取り出して報告する様に言いましたが、後で確かめたら何も入ってなかったと言いましたので」
山本刑事は純平を見た。純平は山本刑事の目がキラッと光った様な気がした。
「川合清一の住まいは分かりますか」
最後の最後に犯人が浮かび上がってきた。
下北沢から川合清一のアパートのある宮の坂まで、大通りをさけて空いている裏道を使い急いだ。
1-6に続く
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