暁 〜小説投稿サイト〜
Trick or treat?
女の子と小鹿
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 雪の多く降った次の日のことでした。

 真っ白な雪原に点々と動物の足跡がいくつも横切っている中、一匹の泥だらけの小鹿を見つけました。

 その黒い瞳にはこの白い世界も、目の前にいる女の子でさえも、映っていませんでした。

 小鹿は少年でした。

 代々続く猟師の家に産まれた彼が猟師になるのは最早必然でした。

 頭角は直に現れ、その評判は森を抜けた隣町にも届くほどでした。

 ある日、少年の目の前にとても美しく……とても哀しそうな女の人が現れました。


「あなたは私の大切な動物たちを殺しすぎました。命の重さを……今まであって当然だった幸せを……あなたの目の前から奪って差し上げましょう!」


 その美しい女の人がこの森を護る女神様の化身だったと解った時には、今の姿に変わっていました。

 それから今に至るまで何が遭ったのか、言葉が喋れなくとも女の子には解っていました。

 彼女もまた喋ることができなかったのでした。

 少年と同じく絶望した瞳を持つ女の子は翌日も、更に翌日も、彼の目の前に来てはパンの半分を手でちぎって足元に置いてはどこかに去って行きました。

 身なりは今の自分と同じくぼろぼろな女の子。

 彼は次第に興味を持ち始めました。

 今日は一歩、明日は更に一歩近づいてみよう、彼の心には久しぶりな…それでいて不思議な感情が生まれ始めていました。

 ……それがいけないことだと微塵も気づかずに。






 クリスマスを過ぎてから一週間も経たない内に迎えた新年に、この小さな村でも一軒一軒のどの家からも家族の笑い声が響いている頃、既に次のシーズンに向けてどの店も動き出していた。

 とは言え、一大イベントの一月遅れだからだろうか、この村の男性諸君は至ってのんびりとしている。

 既婚者は当日買って渡せばいいし、恋人ならイベントさえ二の次にして別世界を作ろうとするが、問題はそれ以外の未婚の男子で、来店しても「いらっしゃいませ」と上品に笑うアズウェルに打ちのめされるのを解っているのか、常連客の他は指で数えられるほどしかいない。


「あら、いらっしゃい。大丈夫なの?何度も家を訪ねてくれるのは嬉しいけれど」


 貴婦人はそう言うと、ゆりかごの中ですやすやと眠る我が子を愛しそうに見下ろした。

 新年が明けてから何日も経たない内に産気づき、まだ十代の所為なのかお産婆さんが到着するや否や、第一子シュネーを産み落としたのだ。

 雪の多く積もった日に産まれた男の子。

 その寝顔も何処となく両親よりも白い。

 雪と名付けられたほどはあるが、この若き母親の野望はそれだけに止まらない。


「うわっ……今日のベビー服もフリフリ…」



[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ