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色と酒
第二章
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第二章

「男だけ、女だけという日も」
「勿論さ」
 大村も大村でそれを認める。だがここであえて言うのであった。
「けれどそれを狙っている日はいいけれどそうじゃない日だと」
「困るのかい」
「当たり前じゃないか」
 続いてそう述べる大村であった。
「だってそうだろう?望んでいるものが手に入らない」
「人生じゃよくあることじゃないか」
 友人は達観した言葉を彼に告げた。確かにこれは真実の一つである。何でも望み通りのものが手に入るかというと決してそうではない。そうした辺りは世の中というものは非常に無常なものであるのだ。
 実はこれについては大村もわかっている。わかってはいてもそれでも不満に感じて仕方がない、彼はそうしたタイプの男であるのだ。
「別に一日位は」
「わかっていないな」
 彼は何故かここで自分が達観した笑みを見せて友人に述べた。
「こうした遊びは望むものを手に入れてこそだ」
「そうなのか」
「そうさ。カサノバだってそうじゃないか」
 十八世紀欧州を席巻した色事師である。その派手な人性はもう伝説にすらなっている。
「色を求める者は求めるものを手に入れてこそ」
「本物だっていうのか」
「その通り。だからだ」
 彼は不敵な笑みにその笑みを変えた。そうして宣言するのだった。
「今日もきっと。男を抱く」
「僕は遠慮しておくよ」
「ああ、そこは安心していてくれ」
 彼は友人には笑って言葉を返した。
「僕は自分の男友達、しかもそっちの趣味はない人間には手を出さないよ」
「それは有り難い」
「それ位の節度は持っているさ」
 笑って述べる。彼とて無差別ではないということであった。
「さて。だからだ」
「行くのかい?」
 ワインを完全に空けて席を立とうとする大村に問うた。
「もう」
「気付け薬は飲んだし」
 ここではワインのことである。彼は無類の酒豪でもある。その彼にとってはワインも水と全く変わらないものであったのだ。
「これで英気は養ったしね」
「そうか」
「君も途中で付き合うかい?」
「いや、僕はいい」
 友人はそれは断った。
「暫くここでゆっくりしていくよ」
「君は相変わらず酒か」
「ああ、こっちの方がいい」
 友人はこう大村に答えた。
「じゃあな。今日はこれで」
「ああ。それじゃあな」
 大村はこの友人と別れた。そうしてそのまま梅田の繁華街に出た。夜の大阪はみらびやかでありそれでいて何処か泥臭い。大阪の雰囲気をそのまま漂わせていた。
 彼はその中を立派に着飾って進む。進みながら周りに目をやり続けている。そうして男を探していた。自分の眼鏡に適う男を。
 だがどうにもそうした相手は見つからなかった。何故かこの日に限ってそうした相手が見当たらないのであった。彼はこのこ
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