第百三話 一発は一発
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ていると決めつけ、自分の事を一度も、そして誰にも話したことなどなかった。
あらゆる世界で愛した人にも、親にも、どんなことでも打ち明けれると思っていた戦友や親友、同期、先輩、妻、子、孫――――たとえ話だとか、もしもといった風に誤魔化しや、ほんの一端ですら話したことが無かった。
「救ってくれないのも……当然だったんだな」
笑えてしまう。救ってほしい事を言わない人間が如何して救ってもらえるのか。シンの言った通りではないか。
此処まで来て、自業自得だという事が分かり、それに納得してしまった自分がいるのだ。安っぽい言葉であっても、きっと自分は本音で話した上で誰かに慰めてもらいたかったのだという事に気付いてしまった。
「なあ、議長。一発は一発だ――――小夜啼鳥は死を告げるなんて言われているけど、皇帝を死神の手から救った鳥でもあるんだよ。そんな矛盾した立場の機体で俺を殺しきれなかった。
シンにも、議長にも借りは返す。俺はそういう主義なんだ。報いは受けろ――――殺し損ねたアンタのミスだ」
迷わずに狙いを付ける。ライフルのエネルギーは充填された。
『異常発生、発射後に自壊する恐れあり――――攻撃準備を直ちに停止してください』
「だから黙ってろって……」
いい加減AIが五月蠅く感じたのか接続を切り、横に予備として取りつけていた操縦桿を引っ張り出す。
「いいね、こういう気分は久しぶりだ」
久しぶりに生を、そして死を実感できていた。これまでの自分がただ惰性で生きていたんじゃないかと思えるぐらいには視界が広がり、色づいているように見える。
「帰ったら熱いシャワーでも浴びて、コーヒーが飲みたいね」
そういうと同時に、遂にビームを放った。
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