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フェアリーテイルの終わり方
幕間 マルシアと妖精
4幕
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 バイカール廃坑の外へ出てから、エルは適当な岩に腰かけた。こうすると隣に座るフェイよりも高い目線で話ができる。
 こうやってエルが少しでも多く姉らしくしなければ、この妹はどんどん遠くへ行ってしまう気がした。

「フェイリオ」

 マルシアが声をかけてきた。フェイは立ってマルシアを迎える。
 エルはマルシアがフェイの本名を知っていることに内心びっくりである。

「今日は素直に引いてくれて感謝してるわ」
「いつもわたし、スナオじゃなかった?」
「そういう意味ではないのよ。あなたはいつも自分の心に忠実だったわ。―― 一般人になったといっても、あなたがエレンピオスの秘密兵器であることは変わらないと考える閣僚は多い。あなたが私のために動いたと知れば、黙っていない者もいるでしょう」

 エルはフェイをまじまじと見上げた。サイシュウヘイキ。カクリョー。よく分からないが、妹がエルとは全くの別世界にいたのは痛感した。

「今はエージェントのあの彼のそばにいるの?」
「ん。ルドガー、パパみたいにしてくれる。それに、姉さんもいてくれる」

 フェイがエルをふり返ったことで、マルシアの目もエルに注がれた。エルはどぎまぎする。相手はエレンピオスで一番エライ人。子供でも事の大きさが分かるレベルだ。

「そういえばこの前はちゃんとお話できなかったわね。こんにちは、エルさん。マルシアです」
「エル・メル・マータ……です」

 エルはついルルを抱えて顔の下半分を隠した。初めての一人前扱いに照れたのだ。
 マルシアはラベンダー・アイを柔らかく細めた。

「姉さんはあのエージェントさんのパートナーなの」
「ということは、クランスピア社の? あそこは実力主義で年齢や出身は関係ないと聞くけど、こんな小さな女の子まで……」
「ううん。姉さんはクラン社の社員さんじゃないよ。でもルドガーのアイボーなの。姉さんには誰にもないトクベツな才能があるから、ルドガーのとなりにいてゆるされてるの」

 それから二つ三つ、マルシアとフェイはエルには分からない話をして、マルシアは離れて行った。

 エルはフェイに解説を求めようとした。しかし不意に、フェイの目の焦点が外れ、ここではないどこかを彷徨い始めた。

「フェイ? どうしたの」
「…………お姉ちゃん、リョージサイバンケンって知ってる?」
「知らない」
「わたしも学校で習うまで知らなかった。簡単に言っちゃうと、犯罪をしたら、エレンピオス人はエレンピオスの法で、リーゼ・マクシア人はリーゼ・マクシアの法で、それぞれ裁判するの」
「じゃあ、今中にいる人たちも? リーゼ・マクシア(こっちがわ)でハンザイしたのに?」
「そう。エレンピオスでは、テロリストは極刑――死罪だって、政治の授業で習った」

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