暁 〜小説投稿サイト〜
首縊り
第四章

[8]前話 [2]次話
「だからだ」
「ううむ、鬼達の噂だったのですか」
「それからだったのですか」
「縊鬼の怨みは鬼にはかからない」
 あくまで生きている者達だけにかかるものだというのだ。
「それで噂になっていたのだ」
「そうでしたか」
「ではだ」
 関羽は縊鬼を見ている、そして言うのだった。
「今からだ」
「はい、今からですね」
「その鬼を」
「そなた達は拙者の力で守っている」
 見れば二人の周りには白い気がある、それがだというのだ。
「案ずることはない」
「これが関羽様のお力ですか」
「この気が」
「うむ、そこで見ているのだ」
 関羽が縊鬼を制するのをというのだ。
「わかったな」
「ではお願いします」
「今より」
「よし」
 関羽は青龍偃月刀を両手に持った、そのうえで。
 鬼に対して一閃させた、間合いは離れているが。
 それでも鬼を斬った、気が出てそれが鬼を斬ったのだ。
 斬られた鬼は瞬く間に姿を消した、関羽はその煙の様に消えていく鬼に対して言った。
「そなたの本来の世界に行くのだ」
「私の本来の世界に」
「ここは生きている者の世界だ」
 だからだというのだ。
「そなたは行くのだ、案内は送る」
「では」
「案ずることはない」
 関羽は鬼に言う。
「そなたは人を殺してはいない」
「首を吊らせてはいませんか」
「吊らせそうになった」
 それはあった、だがというのだ。
「しかし殺してはいない」
「では私は罪は」
「犯していない、冥界でも問われることはない」
「それでは」 
 鬼の声は関羽の言葉を受けて安堵した様だった、そうして。
 その気配も消え去った、関羽はそれを見届けてから。 
 呉と彼の妻にだ、こう言ってきたのだった。
「これで鬼はいなくなった」
「縊鬼はですか」
「これで」
「そうだ、冥界に行った」
「ではもうこの納屋はですね」
「安全ですね」
「うむ、鬼がいなくなったからだ」
 だからだとだ、関羽は赤兎馬の上から二人に言う。馬に乗ったその姿は大柄な彼をさらに大きく見せている。
「安心していい」
「そうですか、しかし」
 ここでだ、呉は首を傾げさせつつ関羽に問うた。
「あの鬼は一体どうして」
「この屋敷にいるかだな」
「はい、それはどうしてでしょうか」
 呉はいぶかしむ顔で関羽に言うのだった。
「あの服は唐の頃の服ですが」
「そうだな、あの服は」
「ではあの鬼は唐の頃の」
「唐、それもだ」
「それも?」
「晩唐の頃の服だ」 
 つまり女もだ、その頃の者だというのだ。
 このことからだ、関羽は言うのだった。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ