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フェアリーテイルの終わり方
八幕 Sister Paranoia
1幕
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 老若男女の人々でざわめくクランスピア社のエレントランスホール。フェイは長椅子の一つにエルと並んで座っていた。

 今日はルドガーがヴェルから呼び出しを受けたので、フェイとエルはルドガーに付いてクランスピア社に来た。
 ルドガーはヴェルを呼んでもらえるように受付に言いに行っているところだ。
 他にミラが、ヘリオボーグからトリグラフに電車で来るジュードと待ち合わせ、後で一緒に来る段取りになっている。

「エル、フェイ」

 顔を上げる。エントランスホールにジュードとミラ、さらにガイアスとミュゼが入ってきたところだった。
 異様な(とフェイでさえ思う)パーティ構成のため周囲の社員がサササッと道を譲ったのに彼らは気づいたか否か。

「ルドガーは?」
「ウケツケに話しに行ってるの」

 エルが言うと、ジュード以外の目線が一斉に受付に流れた。
 その中でジュードだけが、そっとフェイに囁いて来た。

「――あれから、ユリウスさんからコンタクトあった?」

 フェイは無言で首を横に振った。ジュードはほっとしたような残念なような複雑な表情を浮かべた。


 セルシウス逃亡事件であれこれ世話を焼いてくれたユリウスは、未だ逃亡中。ジュードが「せめてルドガーにだけは事情を教えてやってほしい」などと説得したが、ユリウスは頑なで肯かなかった。
 無理に連れ帰ることも人の好いジュードにはできず、ユリウスもまた力に訴えることなく、三者三様に妙な雰囲気のままククル凍窟で別れてそれっきりだ。


 フェイはその時に起きたことをルドガーにもエルにも、誰にも言わなかった。
 過去に〈妖精〉だと知れたことで〈温室〉で過ごすことになったように、フェイが〈鍵〉だと打ち明けることで自分への扱いが大きく変わることがイヤだった。

 やがてルドガーが受付から戻ってきた。真っ先にエルがルドガーの傍らに駆け寄った。

「エル、フェイ。待たせたな――――ジュード! アーストも。珍しいな、本社に来るの」

 戻ってきたルドガーは、ガイアスとミュゼの姿があることに驚いていた。

「でも、ちょうどよかった。今から社長室に行くとこだったんだ」
「最後のミチシルベ、探しに行くんじゃないの?」
「それがさ。その〈道標〉がある分史世界に入れなくなってるってヴェルが。……マクスウェルらしき物体が阻んでる、とか」
「マクスウェルが……?」
「聞き捨てならないわね」
「事情は社長から聞けって。一緒に来るよな」
「ああ」
「当たり前だよ。そんなこと聞いちゃったら、帰るに帰れない」
「ありがとな」




 社長室に行くと、ビズリーにヴェル、それにリドウが待っていた。クランスピア社の上役の勢揃いには、世情に疎いフェイでもさすがに腰が引けた。

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