暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜慟哭と隔絶の狂想曲〜
無言静寂
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い、食事のときは外してある漆黒のロングマフラー。正式名称《マフラー・オブ・ブラックキャット》を装備ウインドウを操作して実体化させ、首に巻きつける。

今はもういない一匹の子猫のことを脳裏に思い出しながら、レンはテーブルにぐてーっとなっている少女に言う。

「じゃあね」

その言葉がアルゴの聴覚を震わすか震わせないくらいのうちに、カランコローンという軽やかな音とともに一人のプレイヤーがこの空間内から消えたことを示した。

ありがとやっしたぁー!という無駄に気合の入っている店主の掛け声がその後に続く。

しばらくの間、アルゴはそのままの体勢で固まっていた。

現実世界ならば、店員からのお小言か店から追い出されるかもしれないほど固まっていたのだが、この店にいる唯一の店員である店主はNPCである。システムに規定された台詞以外は、言うのはおろか言うという意思すらもないただの見てくれだけのマネキンである。どちらにしろ、他に客などいないのだから罪悪感すら起きない。

「…………じゃあね、カ」

顔だけを上げ、《鼠》と呼ばれる少女は言う。

何かを憂うように。

何かを諭すように。

何かを嗤うように。

言う。

「お前はもう、『またね』も言えないくらいに死にたいのかよ、レン坊………」

ちくしょウ、と少女はテーブルを叩く。

自らの非力を恨むかのように。

自らの無力を嘆くかのように。

自らの仕事を蔑むかのように。

しかし、肩を震わせる彼女に声を掛ける者は、誰もいない。

誰も――――いないのだった。










――――言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから――――
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