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第一章 〜囚われの少女〜
画策
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「レナ姫様、お芝居が始まるまであと一時間程ですが――」
 一国の姫と騎士ダニエルはオレリア城の書斎にいた。
 置いてある本はどれも小難しいもので、分厚く重たい本ばかりだ。
 城の教育係の学者などいるが、彼らは姫がいようと構わず、各々本棚に向かっていた。
(レナ様は一体このような場所で何をお探しなのでしょうか……)
「いいからあなたは静かにしていて」
 姫は視線を本に向けたまま、簡潔に一言だけ返す。ダニエルは何か気まずいのか何も言えず、返事すらできないようだった。

 学者たちが調べ物をしているなか、姫はテーブルの上に図鑑よりも大きな本を広げていた。何枚折と折り畳められているページを開いたそれは、建築の図面のようだ。その図面の大きさに姫は思わず圧倒される。
「先生は仰ったわ……敵を攻略するには地図を制する。これは……以前のオレリア城の図面ね……でも現在の物は載ってない……でもどこかにあるはずだわ」
 何やら姫は、独り言を呟いている。
(それにしても、手がかり一つない所からのスタートね……。まるで雲でも掴もうとしているみたいだわ)

「おお……これは! レナ姫様ではありませんか」
 白髭を少しばかり伸ばした、小柄な老紳士が訪ねてきた。小ぶりだが分厚い丸眼鏡の奥では、青銀の瞳を輝かせている。
「二コラ先生! いらして下さったのですね! ……一年ぶりかしら」
 どうやら面識があるようで、姫は思わぬ来客に歓迎といった様子だ。
「もう一年もご無沙汰しておりました。16歳になられた姫様を見ることができるとは、いやはや感慨深いですな」
 老紳士は、先程まで被っていたつばの帽子を手に取る。一年間を振り返り、思い出に浸りそうになったが、コホンといった咳払いで自らを律する。
「そんな事より。姫様がこのような場所に、一体何をお探しですかな? ……見たところ、城の図面をお探しのようですな」
「ええ。先生、どうしても現在の城の図面が必要なのです――でも、その理由はいえません」
(あの部屋の事を他言すれば、あの子が罰せられる――キャスリンは死罪だと言っていたわ……キャスリンを巻き込むわけにはいかないし、なにかヒントさえあれば……)

 姫はとてもこの学者を頼りにしているようだった。
「現在の城の図面ですか……ここにはないでしょうな。なにしろ、間取りや地図などは重要機密になっておりますからな」
 藁にもすがるような先程の勢いに伴い、姫の表情は輝きを失う。
「先生だったら何かご存知かと思って……」
「隣の、資料保管庫なら。もしかしたらあるやもしれません」
 学者の感と知識による重要な手がかり。それを聞くと姫はすぐさま立ち上がった。
「ダニエル・アンダーソン」
 静かな声で、騎士の名を呼ぶ。
「は……はい!」
 置いてけぼりを
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