暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜慟哭と隔絶の狂想曲〜
朝陽
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チュン……チュンチュン………

すずめ(のような)の鳴き声の美しいハーモニーを耳で楽しみながら、レンはゆっくりと眼を開けた。

とても怖い夢を見たような気がするが、手にすくった砂が零れ落ちていくようにその記憶はみる間に消えていった。無意識に握り締めていた手のひらが汗ばんでいるのが、はっきりと分かる。目尻には透明な涙の粒がせり出し、視界を醜く歪ませていた。

「……………………………」

ああ、まただ、と胸中で呟く。

力を手に入れるためならどんな事もする、とほざいていても人を《殺す》覚悟もない。いや、決心はしていても、覚悟はできていない。

戦闘の中でなら、本当の自分自身を《殺す》ことはできる。

悪魔のようで

修羅のようで

鬼神のような

悪鬼羅刹である自分自身を発現させる事ができる。

だが、それはあくまでも戦闘の中だけのこと。《コロシアイ》の中だけでしか、自分は《鬼》になれない。

殺したくない。

ダケド殺シタイ。

相反する二つの意思は今や、この身体を引き裂こうとしている。

バランスはどちらとも同じ。片方が勝つか、負けるか。たったそれだけのことで、これからの自分の行く先は決まるだろう。

身の内に潜む《鬼》はきっとクエストに記載されているクリア条件である、『オレンジプレイヤー二百人の殺害』を満たすことができたとしても、決して止まったりはしないだろう。

そこから始まるのは残虐を超えた暴虐、暴虐を超えた殺戮。

このアインクラッドに住まう約一万人の人々の全てを喰らい尽くすまで、この《鬼》は止まらない。

かの《災禍の鎧》。今の自分はもしかするとアレよりも業が深いのかもしれない。

そんな陰鬱な気分で沈む気持ちをふるい落としながら、レンは起き上がった。部屋に衣擦れの音が響き渡る。

さて、まずは買い物にでも行って転移結晶でも買い――――

「う………………ぅん……」

切り替えようとした少年の横っ面から、とんでもなく無防備かつどことなくエロい声が聞こえてきた。

賭け値なしで、レンは己の心臓が泊まったかと思った。

なぜなら、今自分がいるこの部屋は《圏内》の、しかもシステム的に完璧に保護されている宿屋の中なのだ。ピッキングや開錠などの抜け道(チート)行為は一切受け付けない、まさに密室といっても過言ではない空間。

その中に自分以外の人間がいる。熟練プレイヤーにとっては、もうそれだけで充分すぎる脅威なのである。

「だ、だれ!?」

シーツを勢いよく引っぺがし、恐らく自分の隣で寝ているであろう人間に怒鳴りつける。

まず眼に映ったのは、髪の毛。

明るすぎるブルーに彩られた、珍しい髪の毛。

―――あれ?

こんな髪の色
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