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あかりの碁
プロローグ
よろしくね。明日美さん

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対局が終わった。
気がついたら、多くの院生が観戦していた。
伊角さんに和谷を始めとした、院生1組の懐かしい面子だ。

きっと越智もいるだろうと思って探してみたがいなかった。
あいつ、まだ2組なの?その程度の棋力じゃなかったはずなんだけど。


「お疲れ様でした。あなた強いわね。ホントにもう。
で、院生の誰かに会いたかったんだよね?誰?」

「奈瀬……明日美って言う人なんですけど」

「わかった。……ねえあなた、奈瀬さん知ってる?」

「奈瀬?1組にはいないぜ」

「2組にいたはず」

2組?この時はまだ1組に上がれてないのか……。
まあ、私が院に入ったのがちょうど1年後だったから、その間に伸びたんだろうな。

「ありがと。さ、行くよ。探し人は2組にいるんでしょ?」

「うん。」

そう言いつつ2組を目指す。そこでは数人がその日の対局の反省会を行っていた。
奈瀬の姿も見える。やっと見つけた。

「奈瀬さん、いるー?」

「? あれ、水橋三段?」


あ、このプロの人水橋って言うんだ。

「あなたが奈瀬ね? うーん……ん?」

水橋三段は碁盤を見てしかめっ面をする。

「私に、何か用事ですか?」

「ああ、あたしじゃないのよ。この子がね。」

「え?」

奈瀬が始めてこっちを向いた。怪訝な顔をしている。
確かに、小学6年の、見たこともない人が自分に用事があると言ったら
怪訝な顔だってするだろう。
でも、私はやらなきゃいけない。

「はじめまして。藤崎あかりって言います。
あなたにどうしてもお願いしたいことがあって、ここまで来ました。

単刀直入に言います。塔矢アキラ君とペア碁で打てる女流棋士になりませんか?」


「わかりました。ご教授お願いします。あかりちゃんでいいかな?」

約束を交わした。奈瀬は。いや、明日美さんは、これから私と一緒に強くなるんだ。
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