暁 〜小説投稿サイト〜
あかりの碁
プロローグ
あかりvs水橋紫三段
やばい、鈍ってる……

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日本棋院の1階で雑誌を読んでいたら女の人に話しかけられて、
それに答えたらなぜか院生の横でその人と対局することになってしまった。
確かこの人は……少なくともここに入れている時点で
プロ棋士であることはわかるんだけど、顔を見たことがない。

多分、私がプロに入る年までには辞めるんだろう。

進藤ヒカルとして打った碁の記憶がある今、並みのプロには負けない。
でも12年も碁に触れられなかったから腕はかなり鈍っていそう。


結局、対局してみないとどうなるかわからない。
なら、どのくらい腕が鈍ったか判断する助けにしよう。


「いいわ。叩き潰してあげる。」


目の前のプロの物騒なセリフを皮切りに、対局が始まった。
最初の物騒な言葉の通り、彼女は攻撃的な打ち手だった。
その彼女の打ち筋をかわし、食い込みこちらに流れを引き寄せる。

勝負勘はあまり衰えてはいないようだ。
今から塔矢や佐為に当たるとわからないけれど、今はこれでも十分戦える。

これなら、だいじょう……

あっ、しまった!
そう思いつつ打った場所は、よく考えたら致命傷になりうるミスで。
普段なら絶対打たないような失敗だった。


やっぱり、勝負勘は落ちてる。腕も落ちてる。これじゃ、塔矢や佐為には勝てない。
そう思いながら、相手のプロの手を見る。やはり、ミスに漬け込んできた。

ここは仕方ない。
せっかく起こしたミスなのだから、防御がどこまで出来るか試そう。



結局、防御は比較的うまく行った。けどその分かなり不利になってしまった。
何とかして巻き返して半目差まで詰めたけど、そこまで。

黒56目、白56目半。私の半目負けだ。

「負けました。ありがとうございました」

でも、悔いはない。
しっかり実力を測れたし、今後の課題も見えてきた。
私も、もっと強くならなくちゃ。
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